信州一のパワースポット善光寺の門前町で生まれた七味の殿堂「八幡屋礒五郎本店」
日本を代表する薬味・スパイスともいえる「七味」。みなさん、食事や料理のお供として一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。ひと口に“七味”といってもその風味は使う素材によってさまざま。そんな七味の魅力を探しに旅にでました。
日本三大唐辛子のひとつに数えられる信州の七味
目指すは長野県。東日本最大規模、江戸中期の仏教建築の最高傑作と謳われる善光寺。古くからこの“善光寺詣で”で親しまれてきたのが、門前町にある「八幡屋礒五郎本店(やわたやいそごろうほんてん)」の七味。創業は元文元年(1736年)。江戸時代から280余年にわたり続く老舗です。
東京の「やげん堀」、京都の「七味家本舗」と並び日本三大唐辛子のひとつに数えられる「八幡屋礒五郎」。ひと口でパッと風味は広がりますが、ひと口で語れないのが“七味”。使う素材や調合により味はさまざま。7種類の素材を使うこと以外は七味に定義はなく、「やげん堀」は2種類の唐辛子で辛さに深みがあったり、「七味家本舗」は唐辛子以外香りのある素材を使って香りを立たせたりなど個性があるのです。
「八幡屋礒五郎」の七味はというと、辛みを出すための唐辛子、辛みと香り両方を併せ持つ山椒や生姜、風味と香りのよい麻種(おたね)、胡麻(ごま)、陳皮(ちんぴ)、紫蘇(しそ)の7種類を使い、辛みと香りの調和のとれた独特の味わい。
初々しく新鮮でパッと弾ける香り・辛み・味わいが七味の命
自社農場を所有し、できる限り長野県産の原材料を使い丹精込めて作られる七味は216円(袋入り8g)~。ひとふり約0.2gが目安なので、これで40回分も使える計算に。七味のほかにも「ゆず七味」や「深煎七味」、「一味唐辛子」、「七味ガラム・マサラ」など、9種類ほどの薬味がそろいますが、どれも風味が命。空気に触れた瞬間から鮮度は落ち、開封仕立ての香り・辛み・味わいは、テーブルに置いてある日にちが経ったものとは雲泥の差が。
少しずつ購入して早めに使うのが秘訣とのことですが、そんな初々しく弾ける素材そのものの風味を毎回楽しめるのがひとふり0.2gの使い切りタイプ。この小分けパッケージが30袋入っている「ひとふり」は324円~。7種類のひとふり小分けパッケージが各4つ入った「おためし七味」432円では、いろいろな味を楽しめます。
約30種類の見たことのない色とりどりの素材で自分だけのスパイスを
そんな色とりどりの素材を間近に見ることができるのも醍醐味のひとつ。店頭のガラスケースには赤・オレンジ・緑・黄・茶色など、日本はもとより、世界各国から取り寄せられた素材が並び、オリジナルスパイスを作ることもできます。
自社農場で生産された唐辛子「三鷹(さんたか)」、三鷹の3倍の辛さをもつジンバブエ産の「バードアイ」、三鷹の6倍の辛さの自社産「ハバネロ」、「万願寺唐辛子」など、唐辛子だけでも6種類前後がそろい、陳皮(ちんぴ)や黒胡麻、ゆず、コリアンダー、パセリ、オニオンなどを含めると、約30種類の素材から好みのものを選ぶことができます。
グラム単位で調合できますが、たくさんある素材から何を選べばいいのかわからないのも当然。「初めにほどよい辛みがきて最後に穏やかな甘み」「しびれる辛さと清涼感ある風味」「○○料理に合うもの」などとオーダーすれば、スタッフのアドバイスのもと世界にひとつだけのオリジナルスパイスの完成です。
約80におよぶ日本全国のレストランのオリジナルスパイスなども手掛けている「八幡屋礒五郎」。つい手に取りたくなるようなデザイン性あるカラフルなパッケージや消費者の使い勝手を考慮した小分けパッケージなどに加え、江戸時代創業という伝統に胡坐をかかない、七味をトッピングできるスパイスジェラート、七味素材を生かしたスパイスチョコ、七味缶がスツールになった椅子缶など、七味をベースにした斬新な発想と遊び心が、奥深く豊かな風味を生む源になっているのかもしれません。
記事は取材当時のものです。
八幡屋礒五郎本店(やわたやいそごろうほんてん)
【住所】長野県長野市大門町83
Photos:(C)tawawa