シンプルで豊かに暮らす。シンプルな中にも洗練された機能美が光る.URUKUST(ウルクスト)のレザープロダクト

.URUKUST

 

革本来の強さやしなやかさを生かし、シンプルなデザインながら機能的な作品を生み出すレザープロダクトのブランド「.URUKUST」(ウルクスト) デザイナーの土平 恭栄さんが作りだす作品には「シンプルに暮らすことの心地よさ、豊かさ」が込められています。作品づくりをされている横浜の工房兼アトリエでお話を伺ってきました。

 

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もともとはプロダクトデザイナーから始まった

.URUKUST(ウルクスト)を立ち上げたのは2011年。それまで土平さんはインテリアデザインや建築、家具などの勉強をし、様々なジャンルを扱うプロダクトデザインの会社に入社。実はレザークラフトは中学生の頃からずっと続けていたけれど、まだ仕事にするつもりはなかったのだそう。そこでたまたま会社で立ち上がったバッグのブランドで、元々知識もあったためブランドを担当しバッグ作ることになりました。

バッグ作りは好評で、自分自身も楽しかったけれど、元々独立したいという目標があったため、25歳でプロダクトデザイナーとして独立。木や革のプロダクトを始めたが、なかなか軌道に乗らず悩んでいる時に声をかけてくれたアパレルの会社に、ブランドごと入ることに。

そこでもやはりアパレルの会社、プロダクトよりもバッグの方が売れるということで結局バッグのブランドとして仕事をするようになったのだそう。

プロダクトデザイナーを目指してきたけれど、結局バッグに辿り着いてしまう。もしかしたら、自分はこっちが向いているのかもしれない、と土平さんは考え始めます。再び独立を目指し、仕事をしながら夜は職人さんについて、レザークラフトを勉強し直したそうです。

 

消費されるファッションの世界への疑問

「アパレルメーカーにいたときには、春夏・秋冬で展示会があって、そこにコレクションとして新作を出していくけれど、もう次のシーズンには前の作品は無くなってしまう。考えたデザインが基本的には半年の命、一生懸命考えたデザインがそうして消費されていくことが自分には合いませんでした」

土平さんは言います。

そこで今度こそ独立するのだったら、長く使ってもらえるものを作りたい、定番として一個のものを、ものすごくよく考えて作ろうと決めたそうです。

ものがたくさん溢れている中で、どうしたら買ったお客さまに長く使ってもらえる、愛着を持ってもらえるものになるだろうと考える中で、土平さんはレザークラフトキットを思いつきます。

キットで販売すれば、買った人がちょっと簡単でもいいから縫うことで、もう自分のものになる。普通に買ったものより愛着も生まれるし、そうすれば長く使ってもらえる、と考えます。

 

 

「作る」ブランドだから.URUKUST(ウルクスト)

お客さまに長く使ってもらえる、愛着が生まれるキットの製作を思い立ち、自分で「作る」をコンセプトにブランド名を考えます。いろいろな言葉を探す中で、やはり日本でものづくりをしているのだから日本語がいいと思い、ある日ふと「作る」を逆さにしてみた「.URUKUST」を思いつきます。

言葉の響きも東欧とか、ドイツの感じがして気に入ったほか、最後のSTというのがArtistだったり、職業の名前につく語尾なので、「ものづくりをする人」といった意味合いも込めて決めたそうです。

 

デザインはそこにある問題を解決する方法

「形や見た目を格好よく作るのではなくて、何か問題があってそれをどう解決するかというのがデザインだと思います」と土平さん。

だからキットも初めて作る人が簡単に、できれば3〜4時間くらいで作れる形っていうテーマを前提に、完成形を近づけていく。特に最初に形はあまり決めないのだそう。試行錯誤を重ねてデザインが出来上がっていく、それが結果面白い形になるのだとか。

.URUKUST(ウルクスト)の機能的な作品の数々は、「問題を解決するデザイン」から生まれていたのですね。

 

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まずはじめにパソコンで型紙をざっくり作って、プリントアウトして紙の段階で最低10回はやり直します。調整を繰り返して、やっと革の段階へ。そしてそこから微調整をかけていくことで、ひとつの作品が出来上がるのですが、土平さんはこの段階に非常にこだわります。デザインから作るのではなく、機能から作るというイメージでしょうか。

「お財布にしてもそうだけれど、お札とカードと小銭を入れる使い勝手というのは、とても重要な道具だと思うんです。だからどうしたらお札とカードと小銭が一緒に見ることができて煩わしくないかということを、まず考えますね」

「先に見た目を決めてしまうと凝り固まったものになってしまうから、なるべく柔軟に考えたい。固定概念に縛られないように、世の中にあるお財布のなんとなくこういう形というのも、まずもっと前の前からスタートしようと考えます。そうした方がオリジナリティがあるものが生まれると思います」

 

 

便利なアイテムは果たして便利だろうか

「お財布などに限らず、最近機能がいいものがどんどん出ているというか、どんどん便利なアイテムが増えているじゃないですか。カードがずらっと並んで、ポケットがこんなにありますとか、そういうお財布っていっぱいありますけど、本当にそれが使いやすいのかなって私は思ってしまうんです」と土平さん。

 

 

「暮らしにおいても、いま私はお皿でもコップでも持ち物を最低限にしようと思っているんです。増やしたくないというか。でも例えばこのコップはコップとしても使えるし、ちょっと漬物などを入れるグラスにもなるような、どっちにも使えるようなものを極力選んで暮らしています。でもその一個はものすごく気に入ったものにしたいんです」

シンプルに暮らした方が、空間もスッキリするし、豊かに暮らせる。土平さんは言います。そしてその考えは、土平さんのものづくりにも実践されていました。

「.URUKUST(ウルクスト)の作品もシンプルに作っているので、バッグも一応最低限ポケットは付いてますけれど、このバッグにはファスナーが付いていなくても良いんじゃないかなと思って」

「一個のものはすごく好きなもの、お皿一個にしてもものすごく考えて買うんですけれど、増やさない。適当なものは買わない、気に入ったものを少しだけ、そんな価値観の方に共感してもらえると嬉しいですね」

 

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金具のないバッグ

.URUKUST(ウルクスト)のバッグの特長は、持ち手とボディのつなぎ目に金具が使われていないこと。それでいてデザイン的にも洗練され、かつ軽いバッグが出来上がっています。.URUKUST(ウルクスト)で作っているオリジナルの革はすごく丈夫なのだそうです。なので金属の力を借りなくても、革だけで十分強度がある。しかもただ繋げるだけでは面白くないので、パーツの細部にもこだわってポイントにされています。

 

 

まずパーツから考えることも少なくないのだとか。持ち手のパーツをまず考えて、そこから全体の形を考える。小さいディティールとかパーツを考えるのが楽しいし、好きなのだそう。なのでここでもやはりデザインよりもその目的や機能性から考え抜かれて作られているところが.URUKUST(ウルクスト)の特徴と言えますね。

土平さんいわく、「あまりにも便利な方ばかり考えていてゆとりがない。便利にみんな引っ張られがちな気がする」と。

 

.URUKUST(ウルクスト)の革

よく何の革ですか? と聞かれますが、牛革としか言いようがないんですけどね…、と笑う土平さん。実は.URUKUST(ウルクスト)の革は国内でオリジナルに鞣された植物タンニンなめし100%の革なのです。厳密に説明すると、オイルをちょっと入れて、シボはあまり立たせず、でもつぶしすぎず、柔らかさも少し出している革、だそうです。

 

 

アパレル会社に勤めている時代から憧れていた植物タンニンなめしのタンナーさん(革を鞣す職人さん)に独立して初めて話をしに行った時は、全然相手にされなかったのだとか。名刺すら受け取ってもらえず悔しい思いをしたことも。結局タンナーさんとまたお話しする機会があった時に「なんだ、革のことわかってるじゃん」と見直され、今では良いお付き合いが続いているそうです。

 

植物タンニンなめしの特徴

現在では、植物タンニンなめしとクロムなめしという2つが主流なのだそう。その中でも、使っていくうちにいい表情が出てくるというのは植物タンニンなめしの特徴。いわゆるエイジングを楽しめるというのが植物タンニンなめしの魅力のひとつ。

次に、強いということ。裏地をつけずにバッグを作れるのは植物タンニンなめしだから。同じ本革と書いてあっても、一生モノ、一生大事にできるというのはちょっと違うのだそうです。「見極めが難しいけれど、味の出方が全然違いますよ」と土平さん。

 

 

この先の.URUKUST(ウルクスト)

「今は2人で生産しているので、本当に大変で。大変だけれどそれを続けていくつもりではあります。それとは別に、工場と取り組んでやっていくものも少しずつ増やしていきたい」

それから、新しい挑戦をしているそうです。それはなんと豚革の新作。豚革というのはすごく傷が多く、植物タンニンなめしでも傷が残ってしまって使える部分が少ない、そういう素材なのだそうです。けれど実際目にしてみて、本来なら使われないような傷も土平さんは良いと思ったそう。「豚ってこういう風に生きているから仕方ないよね」と。だから逆手にとって傷がいっぱいついた豚の革の作品を出そうと考えているそうです。

これが世間からも良いという評価になれば、タンナーさんも喜んでくれる。とても楽しみにしてくれているそうです。傷は一般的には嫌われ捨てられてしまう部分。

「でも、そんな傷も良いと思ってくれる人が増えると良いなと思っています」

革の新たな魅力発見につながる予感がしますね。展示会で一足先に実物を拝見させていただきましたが、素朴であたたかみのあるすてきな作品でした。

アトリエは月に1度ショップとしてオープンしていますので、これを読んで興味を持った方は是非ホームページでオープン日を確認してみてください。シンプルで居心地の良い素敵な空間ですよ。

 

こちらは、2017年3月13日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。

 

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