古き良き日本の伝統を新しい形で発信し続けるファッションブランド「傳tutaee」
ものづくりの発信地として注目される蔵前エリア。中でも東京大空襲にも焼け落ちることなく、いまも佇む「タイガービル」は国の有形文化財に指定されています。その歴史あるビルの一角にショップを構える「傳tutaee」は日本の伝統技術を取り入れたアパレルブランドです。
デザイナーの合田さんと、広報の吉原さんにお話を伺いました。
お話を伺うにあたって、タイガービルを訪れると、なんとも堂々とした佇まい。足を踏み入れるだけで少し緊張します。
傳tutaeeはビルの4階奥にアトリエ兼ショップを構えています。この丸い形の窓が特徴的。
ブランドは15年目。蔵前に移転してきて4年が経つそうです。
「傳tutaeeはデザイナーの合田というフィルターを通して、いろんな日本の伝統を活かして、過去にあったものをそのまま作るのではなくて、新しい形の表現を模索して提案しています」
と吉原さん。
「藍染は埼玉の武州であったり、産地を大事にして、つなげていくように仕事をすることがブランドのコンセプトのひとつとしています」
「15年やってきた中で、たくさんの素晴らしい技術と出会ってきました。それでもいろいろな事情で潰れてしまう技術がある。でも私たちみたいな小さな規模ではすべてを支えることができない。だから素晴らしく面白いものが作れる人がいるうちに、もっと私たしは面白い表現を作っていかなきゃいけないと、ここ何年かで感じています」
そんな中、蔵前に移ってきて東京の職人さんと創り上げた作品が、浴衣などに使われる注染の布で作った日傘です。
「注染の良さって裏も表も染まっていくところなんです。この生地でいつか周りの人も、傘をさす人も楽しいで日傘ができたらいいなっていう想いがあって」
「蔵前で活動していくときに、やっぱり台東区って職人さんもまだ残っているので、傘の職人さんと出会って作ることができました。これは浜松の注染なんですけれど、日本の伝統的な染めだと思うんですよ」
着物や手ぬぐいに使われる注染ですが、あえて着物のイメージをあまり出さないモダンな柄に仕上げることで、今の洋服にも合うようにデザインされたそう。デザインはすべて合田さんが考案。手描きの型紙から職人さんに手作業で型を起こしてもらいます。
デザイン画から少し太く仕上がるのも手作業ならではの味わい。手作りの注染だからこそ表現できる滲みや線の柔らかさに魅力があるそうです。
「しかし、残念ながら注染も工場が減っている現状があって、今残っているのも浜松では代表的数社くらいなんです」
数社の染工場さんが、みんなで連携しながら頑張って残ってくれているそうです。
「注染の産地というのは東京、大阪、浜松と言われていますが、水が綺麗であったり、風通しが良かったり、やぐらを組んで染めたものを川で洗って干すので、大変な作業になります。なので場所や人が合致した場所でないとなかなかできないですね」
そんな伝統的な注染で作られた日傘ですが、伝統のものだから買う、というだけではなく、そのもの自体を気に入ってもらい、結果それが日本の昔からの技術だったということを後から知ってもらってもいいそうです。
「ものとして完成されていることが一番だと思うので、この日傘を楽しんで使っていただきたいと思います。装いも楽しんで、お出かけしたくなるような。それがものを取るっていう最初の気持ちだと思うので」
「いつも考えているのは、ちょっと気持ちにゆとりが出たり、生活が変わる一品ってあると思うので、私たちもそういう一品を作っていきたいということ」
傳tutaeeでは、オーガニックコットンを使用したアンダーウェアやルームウェアも展開しています。
「身体に直接まとうものだから、オーガニックでシンプルなデザインにこだわりました。ライフスタイルがどんなに大事になったとしても、気持ちのいい衣類を欠くライフスタイルってないと思うんですね。オーガニックのアンダーウェア、ルームウェアを作ったというのはそういう想いがあります」
このオーガニックのルームウェアの着想から、身にまとうものをコンセプトに展開し、なんと新たに生まれたのが「香り」です。
「着想としては同じです。気持ちのいい香りをまとって、生活がちょっと豊かになるひとつのきっかけとして、そして人との繋がりがあって、ここまで自分たちの思い描いた香りを作ることができました」
この香りも、東京の職人さんと一緒に香りからデザインまで作り上げたもの。
「生活をしていく上でのいつもよりちょっと上のものを提案していきたいなと思っています。すごく高級なものをどんどん消費してくださいっていうことではなくて、ちょっといいものを取り入れることで心のあり方も変わるじゃないですか」
「私たちが衣類を中心としてできる活動をちょっとずつしっかりとやっていく。小さなブランドなので、私たちの取り組みを面白いと思ってくれる人に出会いたいですね」
代官山から蔵前に移転してきて、今まで知らなかった東京での可能性の多さに気づいたそうです。
「僕たちは自分たちのブランド背景ももっと大事にしつつ、新しいことに挑戦して、かつやりたかったことがこの界隈でまだまだあるんじゃないかなと思っています」
蔵前はいろいろな業種が集まって、それぞれに街を愛し、活躍していることが刺激になるそう。
「安いものがいっぱい増えた世の中なので、私たちももっと本質をしっかりと伝えられるように、伝えられるその先の人を広げられたらいいなと思います。生活の中で1個変わるとなんか変わることがあるよねっていう、その1個を少しずつでも増やしていきたい」
蔵前の有形文化財の中で、伝統を支えながら常に新しいものを発信してゆく傳tutaeeのこの先に注目ですね。
記事は取材当時のものです。詳細は店舗までお問い合わせください。