手織りだからこそ実現できたぬくもりあるバッグたち。吉祥寺「trois temps(トロワ トン)」
手織りの生地で作られた素材感が可愛らしいtrois temps (トロワ トン)のバッグや小物。すべて手作業で行われる手織りには素材の良さを引き出す魅力がありました。本当に欲しいものってなんだろうと考えたときに、大量生産では作ることができない、ひとつひとつ表情のある生地がこころに語りかけてくるような、そんなあたたかなプロダクトです。
trois tempsとはフランス語で「3拍子」という意味。素材・デザイン・商品、trois temps・商品・お客様など「3」のバランス良い調和により、更に新しいものが生まれてくる楽しみを考えつつ物作りをしています。
さっそくデザイナーの藤野 充彦さんにお話を伺いました。
藤野さんは元々は服飾デザイナーとしてご活躍されていて、独立と時を同じくして手織りに出会い、その魅力にとりつかれたそうです。
今まで携わってきた工業的なものづくりでは、良いものがあってもいろいろな制約から製品化できなかった商品、アイデアがあり、それはデザイナーとしての悩みでもありました。
「手織りなら1個から作れるじゃないですか、自分が作りたい生地がすぐ作れる。それが魅力的に感じました。手織りの良さっていうのは、今の時代に逆行しているかもしれないですけれど、1個から作れて、本当に欲しいものが作れること。本当に欲しいものがタイムリーに作れるんです」
ひとつひとつ手織りをするというのは手間のかかる作業。だからといって、手間をかけたから必ずしも良いものだということではなく、手間がかかる手織りだからこそできる品質の良さや、性質の良さがあるのだそうです。
「今までのバックグラウンドを活かして、手織りの生地で洋服を作ろうかとも思ったけれど、生地もたくさん必要で、無駄も多いし、現実的じゃない。やっぱり人の手に渡って使ってもらえるものをと考えた時に、バッグなどの小物に行き着いたんです」
6年目を迎えるtrois tempsは、常に新しい生地やデザインを生み出しています。
「ものづくりが成熟してしまっている業界なので、合理化しているところから逆行して、もう一度良いものを作るところから見直したいなという想いでブランドを始めました」
「心がけているのは、まず見たときに良いなと思ってもらえること。ものとしての良さが伝わることを一番に考えています」
手織りというと歴史があったり、敷居の高いイメージがありますが、良い意味で手織りらしくない、現代に合わせたものづくりを目指しているのだそう。
「見た目の良さとか、かわいさを大事にしています。時代に合わせて、お客様に手にとっていただけるものがまず一番。まず目に留めてもらう、たまたま通って『お、いいな』と思ってもらえるところから、結果的にこれは手織りなんですよという物語がついてくればいいんです」
良いなと思ってもらえるのは、機械では出せない独特の風合いや素材感がひとつのきっかけでもあるという藤野さん。最終的には手織りの良さにたどり着くのですね。
「手織りのちょっとした不揃いが心地よいんですよ。そこが機械で織った冷たい感じというのと違うところ。手織りにしか出せない、いい意味で不揃いなんです」
商品を手に取ったお客さまにはどんなことを感じてもらいたいのでしょうか。
「一番思っているのが、楽しくなるということ。いいものを買ったときって毎回それを使うのが楽しみじゃないですか。それを一番長持ちさせたい。買ってよかった、毎回持つとき楽しい、これを持って出かけたいという気持ちを大切にしています」
なので、シーズン毎に商品をガラッと変えないことを心がけているそう。自分たちが良いと思って作っているものだから、良いものはいつだって良いものだというスタンスでものづくりをしています。
これもお客さまに何年も楽しんでいただきたいという気持ちから。
また、デザインもあえてシンプルに作ることを心がけているそう。
「カバンも試着してみたり、持ってみたらあれ?ってならないように、デザイン的に行き過ぎないようにしています。モノとしてのデザインの完成度を上げちゃうと、人と喧嘩しちゃうので。持った時に完成するというのを目標にしていますね」
展示会でもお店でも、なるべく鏡で合わせてみることをお勧めしているのだそう。その時にお客さまに喜んでもらえるのが何よりの喜びなのだとか。
なので、シンプルでどこにでも持っていける、デイリーに使えるものが多くラインナップされています。
今後はあのほぼ日手帳とのコラボで世界が広がったように、いろいろな可能性を広げていきたいそうです。
「まずは続けていくことが一番大事。僕だけの活動で終わらせたくないので。トロワ トンというブランドとして、布を使ったもので世界を広げていきたいなと思っています。いろんな専門的な人と組んでやらせてもらえるといいなと」
現在も精力的にいろいろな分野の作家さんとコラボ商品を作っているtrois tempsですが、これからの広がりが気になりますね。
こちらは、2017年4月25日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。