本の森に包まれる映画のセットのような“日本一美しい本棚”がある「東洋文庫ミュージアム」
“日本一美しい本棚”があるという東京・駒込の「東洋文庫ミュージアム」を知っていますか。特別な知識がなくても東洋文化に触れることができる博物館で、約100万冊もの文献が収められた研究図書館「東洋文庫」に併設。その圧倒的な量と美しさを放つ本棚を目の前にすると、迷宮世界に迷い込んだような錯覚すら覚えます。
1924年に三菱第三代当主岩崎久彌氏によって設立された「東洋文庫」は、世界中から集められた文献・貴重書・絵画など、約100万冊が収められた東洋学の専門図書館・研究所。世界5大東洋学研究図書館にも数えられ、東洋の文化や歴史などを広く知ってもらうことを目的に開設されたのが「東洋文庫ミュージアム」です。
このミュージアムにある、“日本一美しい本棚”と言われる「モリソン書庫」が本日のお目当てですが、入口を入って最初に目を奪われるのが「オリエントホール」。高さ約8mの吹き抜け空間の正面は一面ガラス張りになっており、光と影のコントラストが優しく迎えてくれます。ここでは企画展に関連する展示や蔵書の全容をわかりやすく紹介。なんとアジアには80言語ほどあるらしいのですが、そのほとんどの言語で書かれた文献を所蔵しているのだとか。
オリエントホールから階段を上ると、いよいよ「モリソン書庫」。一歩ずつ歩を進めると照明の落とされた空間に、高さ約9m、3層になった見渡す限りの本の森が広がります。辞書のように分厚い本・薄い本・えんじ色・青色・緑色・・・ さまざまな表情を見せる本が眼前に迫り、重厚感はあるのですが、高さがあるからなのでしょうか圧迫感はありません。
2万4000点もの文献がそろう「モリソン書庫」。オーストラリア人でイギリスのジャーナリストとして活躍したモリソン・ジョージ・アーネストが収集したものを、1917年に東洋文庫の創設者である岩崎久彌氏が購入したのだとか。現在の金額で、総額70億円ともいわれるほどの貴重なコレクションなのです。
書庫の前にはソファーも配されているので、忙しい毎日を忘れて、その歴史を感じながら物思いにふけってみるのも悪くありません。静寂な空間で、本の森が何かを語り掛けてくれるかもしれませんね。
その隣にあるのが「岩崎文庫」。その名の通り、岩崎氏のコレクションが展示されているスペース。国宝や重要文化財も含むミュージアムきっての“お宝の間”といえます。書籍はもちろんですが、鮮やかな色合いがしっかりと残っている浮世絵などにはとくに目を奪われます。
照明が極限まで落とされ、床面がガラス張りで地底に落ちていくよう幻想空間「回顧の路」は、実は深さたったの10cm。「クレバス・エフェクト」という仕掛けを使ったスリルある演出で頭をリフレッシュ!
ミュージアムの入口まで戻り、左手にある謎の扉を開けると屋外に。こちらも展示のひとつで「知恵の小径」なる石畳みの小路が続きます。緑のツタが絡まる壁面には、何やら見られぬ文字が。ペルシャ語にヒンディー語、カンボジア語・・・ 象形文字のような中国西南部の言語ナシ語まであります。
よ~く目を凝らして白字の下を見てください。薄く日本語訳が書かれているのがわかりますか。これも仕掛けのひとつで、壁面にはアジア各国の名言が刻まれ、そのフォルムもおもしろいアジアの言語に親しみながら、お気に入りの格言を見つけて散策を。
小路の行き着く先は「オリエント・カフェ」。コーヒーやアルコールなどがそろっているので、緑美しい中庭を望みながらひと息入れるのにはぴったり。書籍を模したお重に入った変わり種のランチやディナーメニューもあるので、ゆっくりと食事を楽しむこともできます。
Photos:(C)tawawa
記事は取材当時のものです。
東洋文庫ミュージアム
http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/museum_index.php
【住所】東京都文京区本駒込2-28-21
【開館時間】10:00~19:00
【定休日】火(祝日の場合は翌日)
【料金】900円
【アクセス】 東京メトロ「駒込駅」2番出口より徒歩6分