伝統の染め技術「注染」手ぬぐいの復活と継承。オリジナル手ぬぐいブランド「注染てぬぐいchill」がオープン
染めの手法の一つである「注染」は、明治時代に大阪で完成された技術で、浴衣や手ぬぐいの大量生産を可能にし、大阪市内から堺、柏原へと広がりました。しかし、ライフスタイルが西洋化する中、染工場は苦境の時代を迎え、堺や柏原の工場は相次いで姿を消しました。堺市では行政主導で地場産業の活性化の動きも出てきましたが、現在柏原市内には4軒しか注染工場は残っていません。
「注染てぬぐいchill(チル)」の店主、三上翔さんは祖父の代より注染に使う防染糊を作る町工場を経営。幼少期より、てぬぐいや注染の文化を身近に感じながら育ちました。
柏原で生まれ育ち、堺に負けないよう盛り上げていきたいと一念発起し、この度柏原市の助成を受け、2016年10月より「注染てぬぐいchill(ちる)」をJR柏原駅前にオープンすることとなりました。
注染とは海藻を主とした糊で防染し重ね上げた生地の上から染料を注ぎ込み染め上げる、
明治期に大阪で生まれた伝統技法です。
一度に大量に染めることのできる注染は当時としては画期的な染色技法でした。
プリント技術の発展及び機械化、日本人の服の西洋化などで注染の生産量は減っていきましたが、近年、伝統技術のすばらしさに気付いた人たちや近代デザインとの融合によって生産量も持ち直してきています。
最盛期の柏原では浴衣の生産量日本一の時期もありましたが現在、堺や浜松などの産地に比べ生産量、知名度で一歩後れを取っている状況です。
そこで三上さんは、現代的なデザインのオリジナルのてぬぐいを作成し、注染てぬぐいの魅力や、柏原の産業を活性化・宣伝したいと考え、クラウドファンディングにも挑戦しています。
夢は「ライブやフェスで振り回される日本中のタオルを全て、てぬぐいにすること!」
柏原市駅前に2016年10月にOPENした「注染てぬぐいchill(ちる)」
いくつかの工程を映像でご紹介します。
糊置き(板場/いたば)
白生地を糊台の上に置き、伊勢型紙(和紙を重ね合わせて柿渋が塗られた伝統的な型紙)を取り付けた木枠を乗せてヘラで防染糊を柄の色を付けない部分に塗り付けます。
柄が合うように手ぬぐいのサイズでピッタリ生地を折り返しその都度防染糊を塗っていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=8yQmmOz3aYY
注ぎ染め(壺人/つぼんど)
染台の上へ置いた重ね合わせた生地の上に、染める色ごとにケーキのホイップクリームのように絞り出した
土手という囲いを築きます。そして上から染料を注ぎ、染台に取り付けられたコンプレッサーで染料を
下から吸うことで染料を生地に浸透させます。
注染独特のぼかしといった表現は染料の注ぐ量や浸透させるタイミングなど絶妙な職人の技術でできています。
この工程を行う職人を壺人(つぼんど)といいます。
https://www.youtube.com/watch?v=Dl7SUaPh0lc
洗い(浜/はま)
染め上げた生地は川と呼ばれる場所で水洗いし防染糊や余分な染料を落とします。
昔は川で行われていた作業で染工場が川の横にあるのはその名残です。
乾燥(伊達/だて)
遠心分離機で水分を取った後は伊達と呼ばれる乾燥室で乾燥させます。
ただ干しているように見えますが色移りしないように干し方にも職人の経験が必要です。
干し方にも職人の腕が試されます。
7m~10mの高さから吊るします。染め屋さんらしい光景です。
大阪の良きてぬぐいを全国に世界に。いつの日か世界中で柏原のてぬぐいが振り回される日を夢見て頑張る三上さんを応援しに、ぜひお店に足を運んでみてはいかがでしょう。
記事は掲載当時のものです。