りんごとお菓子作りへの夢が詰まった小さな工房「りんごのお菓子 ポムム」

 

ぽってり熟した旬のりんごを、ひとくちサイズに閉じ込めた『りんごのマカロン』。マカロンといえば、クリームをサンドしたパリ風のマカロンが有名ですが、『りんごのマカロン』は“マカロン・ダミアン”と呼ばれるフランスのピカルディ地方の伝統的なレシピが元になっています。可愛らしいだけでなく、東京駅ニッコリーナで人気1位に輝くほどの実力派でもあるのです。

 

りんごのマカロン

東京・国立(くにたち)の小さな工房で、一つ一つ手作業で作られているりんごのマカロン。ちょっと不揃いなところも、まるで本物のりんごのよう。緑色のヘタのように見える部分にはピスタチオが埋め込まれています。

見た目はクッキーのようですが、主な材料はアーモンドプードルとりんごのコンフィチュール。「サクサク」ではなく「むぎゅむぎゅ」というような独特の食感がくせになる人も多いそう。

りんごのお菓子 ポムム

『りんごのお菓子 ポムム』は、住宅街にたたずむ一軒家に工房と直売所を併設した小さなお店です。売り場のすぐ後ろが工房になっており、りんごのマカロンをはじめ、りんごのマフィンやりんごのプリン、タルトやアップルパイなど、作りたてのお菓子が並びます。近隣だけでなく、遠方から訪れるお客さんも多いのだとか。

「りんご」はフランス語でポム(pomme)といいますが、ポムム(pomum)とはラテン語のりんごを意味するそう。

「“ポムム”の響きがとても可愛らしく、たくさんの人に親しんでもらいたいという思いから名付けました」と、代表の佐藤方子(さとうみちこ)さんは話します。

ポムムの工房

小さな頃からお菓子が好きで、高校時代からお菓子作りをはじめたという佐藤さん。毎週のように自宅のキッチンを独占しては、新たなお菓子の試作に挑戦していたといいます。

「やがて家族みんなが私の作るお菓子を楽しみに待っていてくれるようになりました。お菓子が完成する夕方ごろになると、ふたりの弟と両親がリビングに飛んできて、みんなでお茶とできたてのお菓子を囲んだものです。自分が作ったものを食べて“美味しいね”と言ってもらえる喜びが忘れられなくて、いつかお店を持ちたいと自然に思うようになりました」

りんごのマフィン

そんな思い出の中でもりんごのお菓子は特別で、お母さんがよく作ってくれた「煮りんご」の懐かしい味は、今でもお菓子作りの原点になっているそうです。

「ちょっと酸味のある紅玉(こうぎょく)と甘い砂糖が合わさったときに生まれる深いコクが、昔からなんとも言えず好きなんです」という佐藤さん。

2007年に念願かなえて、自宅の一階で『焼き菓子工房 ポムム』をオープンします。開店以来の定番商品『りんごのマフィン』は、ほんのりシナモンが香る“煮りんご”が元になった懐かしい味で、長年のファンの方も多いそう。マフィンの上にはりんごのコンフィチュールのゼリーをかけるのがポムム流です。

りんごのお菓子 ポムム

ポムムのりんごは、佐藤さんのご主人の故郷でもある青森県産のもの。りんご農家さんたちの努力の賜物でもある、品質と保存状態のいいりんごが、1年を通して届くのだとか。

春には紅玉、ふじ、王林。夏には恋空、秋にはさんさ、冬から春にかけては紅玉……と、実はポムムのお菓子は季節に合わせてりんごの品種が移ろうのです。佐藤さんはそれぞれのりんごの良さを活かすため、品種に合わせて微妙にお菓子のレシピを変えているそう。

りんごのタルト

紅玉が丸ごと1個使われた『りんごのタルト』は、紅玉の鮮やかな赤色を活かした、りんごをこよなく愛するポムムらしいタルト。丁寧にスライスした紅玉を、特製クレームダマンドの上に綺麗に並べて、オーブンでじっくり焼き上げます。10月頃〜翌年4月頃の紅玉の季節限定のタルトです。

りんごのプリン

『りんごのプリン』は、絹のように滑らかな口どけのなかに、りんごのコンフィチュールとカラメルが絶妙に絡み合い、一度食べると忘れられない一品です。

今ではポムムの看板娘ともいえるりんごのマカロン。ですが、マカロン以外のお菓子にもポムムにしかないこだわりや、りんごへの深い愛情が込められていることが伝わってきます。

りんごのマカロン

「マフィンやプリンといった定番のお菓子でも、必ずどこかにポムムらしいエッセンスを加えるようにしています。ひと手間をかけて、丁寧に作り続けることを大切に。食べてもらった人たちの“美味しい”という声が、昔も今も一番の喜びなんです」

りんごとお菓子作りへの思いがぎゅっと詰まった『りんごのお菓子 ポムム』。可愛くて奥深い、お菓子になったりんごの魅力はここにしかないもの。あなたも一度、小さなお店を訪れてみませんか?

こちらは2019年5月6日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。