忘れてしまった子供ごころを呼び起こす、ポップな中にも洗練されたユーモアが美しい服。上野POTTENBURN TOHKII(ポッテンバーントーキー)
「服で人を驚かせたい、でも美しくありたい」と語るPOTTENBURN TOHKII(ポッテンバーン トーキー)のデザイナー中島トキコさん。私が初めてその洋服を目にした時は、「なんだか変わっていて気になるな」と一目で惹きつけられました。ポップでありながら、洗練された洋服たちはどのように生まれるのか。お話を伺ってきました。
デザイナーの中島トキコさんは元々大学で文学部に所属、美学を勉強していたそうです。美とは何か?その問いは今の洋服作りの根底にも強く影響しているのだなとお話を聞いて感じました。
元々デザイナーになりたかった中島さんは、夜学で洋服のパターンのコースに通い、大学卒業後1年ほどイギリスで洋服の勉強をしたそうです。販売員などを経験したのち、海外プレスからも評価の高いブランド、ミントデザインズでインターンを経験し、一念発起独立することに。
「もう自分で始めるしかないなと思って。デザイナーになりたいなという気持ちは高校生くらいの時から変わっていないので」
様々な経験を積み、27歳で独立。最近ではいま人気の「ほぼ日手帳」のカバーに生地が起用されたことでも注目されました。
「常にどうやったら見ている人に『なにこれ!』って驚いてもらえるかなと考えています。
そこに大人になって普段忘れているような、子供ごころを思い出させるような、楽しい要素を取り入れて。子供の頃素直にワクワクしたことを問いかけてみたり、そういうコンセプトでやっています」
中島さんの服は見た目のデザイン性もさることながら、聞けばクスッと笑ってしまうようなコンセプトが仕込まれています。
「今使っているメッシュなども、ホームセンターで出会ったんですけど、鳥よけネットとか網戸を見た時に、これを服の素材にしたらクスッと笑えるかなと思って。
クスって笑える要素は、例えばカミナリをモチーフにした服があるのですが、カミナリがたくさん鳴ってて窓を開けたら、実は紙がたくさん鳴っていた(紙鳴り)、っていうテーマで。なので和紙を使ったりしてます」
まさか鳥よけネットが洋服に?雷と紙をかけて?とその発想の斬新さに驚かされます。
「そういう言葉遊びだったり、遊び心を入れています。見た目ではわからないんですけれど、聞いたりするとぷって笑えるような。そんな笑いが潜んでいますね。
くだらないことを真剣に考えています。真剣にふざけるというか。クスッと笑ってほしいと思っているけれど、笑われる服を作りたいのではなくて、最後はやっぱり美しくありたい」
美しい服、というのももうひとつの大事なテーマのようです。そのためには様々な努力も惜しみません。
実はメッシュを作ってくれる工場も自分で一から探して交渉したのだとか。相談しながら新しい素材に挑戦するという、そのやりとりも面白いのだそうですが、はじめは人脈もなく、何をどこで調達したらいいのかもわからなかったという中島さん。
今では少しずつ輪が広がり、糸もいろいろ混ぜてもらったり、染めてもらったりと、糸から作るところまでこだわっているそう。アトリエにはデザインがやサンプルの数々が。
POTTENBURN TOHKII(ポッテンバーントーキー)のユーモアの源は、現代美術や広告を見ること。広告などはシンプルだけれど面白いなと思うところからインスピレーションを得るのだとか。
また図書館では子供の絵本をリサーチすることも。シンプルでわかりやすく面白かったり、楽しかったりするところがいいなと思っているのだそう。アトリエには資料の絵本がたくさんありました。
絵本のシンプルな美しさや、言葉遊びだったり、きれいな言葉を参考にしていると、書棚から何冊かお気に入りを見せていただきました。
「元々、笑わせたいっていう気持ちがあるんですかね。関西出身なんで、人からもよく言われます。自分のネタを見せて笑ってもらえたら『よっしゃー』ていうか、そこが一番自分のパワーになっているので」
そんな中島さんに今後の展望を伺いました。
「もっと人に体験してもらえるような、インスタレーションというか身体の動きとかにも興味があって、動きの中で洋服を着てもらえるようなことをやってみたいです」
「コンテンポラリーダンスとかにも興味があって、アイデアの元をもっとわかりやすく、違う表現の仕方で明確にしていきたいっていうのがありますね」
新しいことにどんどんチャレンジを続けているPOTTENBURN TOHKIIの未来にはどんな笑顔が生まれるのでしょうか。今後の展開がとても楽しみです。
こちらは、2017年5月31日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。