あたたかな時間との邂逅。古き良きをたしなむ人たちが集う喫茶店 神楽坂「ORihon」
奥神楽坂の路地の先に、タイルの外壁がノスタルジックな喫茶店があります。ここは元々折本工場だった物件をリノベーションしたお店、なので名前を「ORihon(オリホン)」といいます。雰囲気のあるドアを開けるとそこはまさしく、懐かしの喫茶店。思わずふっと肩の力が抜ける、あたたかな空間です。
ORihonは2017年の1月5日にオープン。お父さん世代がのんびりできるお店にしたいという思いをきっかけに、ちょっと息が抜けるような、休憩場所のような場所をつくるため古き良き「喫茶店」をテーマにお店づくりをしたのだそうです。
奥神楽坂にはなかなかない、ゆっくりとくつろげるお店だなという印象。伺った際もオーナーの熊木さんご夫妻にあたたかく迎えていただき、アットホームな空気を感じました。木の内装も気取っていなくてとても心地よい喫茶店です。
「新しいものじゃなくて昔からあるもので、続いているからこそ意味があるものだったり、大事にされているものだったり、っていうものを、今はもう身近にない世代、縁遠くなってしまった人とつなぐようなあたたかい場所になればいいなと思っています」と熊木さん。
お店で扱っているのは喫茶と洋食、メニューに関してはとにかく自分たちで手作りが出来るものをその範囲でお客さまに提供するということにこだわっているのだそう。
今はチェーン店が多く、既製品が普及してどこでも同じ味を食べることができる。けれど、本当につくると美味しいんだということを知らない方が多く、いざ食べようと思うと高かったり、なかなか普段使いできないので、出来る範囲で手作りの温かさがきちんとあるものをお届けしていきたいとのこと。
なのでお料理もスイーツも基本的には店長が手作りしているもの。お食事の味付けのドレッシングであったり、タレなども手作りしているので、このお店に来るとこの味が食べられるね、と思ってもらえると嬉しいそう。
私のお気に入りは何といっても「自家製レモンスカッシュ」です。厚切りのレモンがふんだんに入っていて、それをお好みでスプーンでつぶしながらいただきます。懐かしい甘みとすっきりとした炭酸でこの季節にはぴったり。ホットのレモネードも寒くなったら是非飲みに来たいと思います。
コーヒーは近くの自家焙煎コーヒースタンド「swing by coffee」さんのオリジナルブレンドを提供しています。とにかく美味しいので、コーヒー好きの方にもおすすめしたいです。
また内装にもこだわりが詰まっています。とにかく熊木さんがこだわったのは「喫茶店」という雰囲気作り。カフェではなく、あくまで喫茶店なのだそうです。ステンドグラスの照明や、あえてくすませたミルクセーキ色の壁、おしゃれにならないよう、洗練されすぎないよう、内装作りは大変だったと語ってくださいました。
気になったのは、店内に本棚があること。折本所時代に作っていた本から、熊木さんセレクトの本まで、気分や季節に合わせて入れ替えているのだそう。折本所時代の歴史を引き継いでいるんですね。
置かれたジャンルも多岐にわたるので、気になる本を片手にゆっくり過ごすのもいいですよね。店内でも読書をされている方をお見かけしました。˜
そんな想いの詰まったお店にはノスタルジックであたたかな時間が流れています。お客さまの層は幅広く、70代くらいの方から、下は幼稚園まで。近くの高校生が立ち寄ってのんびりくつろいでいくこともあるのだそう。
熊木さん曰く、「すごくいいお客さまたちに使っていただいてるなって感じます」とのこと。みなさんそれぞれにORihonでの時間を過ごしていて、中にはリラックスしすぎて眠ってしまうお客さまも。実はそんなお客さまの姿を見るのも喜びなのだとか。
これからのORihonは今まで平日19時、祝日も18時で閉めていたところを、週に1回金曜日だけ夜の23時までお客さまをお迎えするという日を作ろうと考えているそう。
「今まで昼のランチしか食べられなかった近隣の会社員の方や、カフェタイムにしか足を運んでいなかった近隣住民の方などとコミュニケーションを取れたら素敵だなと思って」と熊木さん。
夜になったら「ただいま」って帰ってきたい、金曜日だから今日は帰りに寄れるねってお客さまに思っていただけたら嬉しいとのこと。
そんな、よりあたたかいお店を目指して現在夜間営業を計画中なのだそう。自分の時間が欲しいなと思ったら、ふと立ち寄ることができる、そんなお店を目指して。熊木さんご夫妻の想いが詰まった「喫茶店」へ是非足を運んでみてください。
記事は掲載当時のものです。