本物のシーラカンスがいる世界唯一の深海をテーマにした水族館
世界初の深海に特化した水族館が日本にあることをご存じですか。場所は静岡県の沼津。しかも"生きた化石と"といわれるシーラカンスが5体も展示されているのです。レプリカではありません"本物"です。光の届かない海の中に生息する、見たこともない深海生物の魅力が満載です。
コモロ諸島で捕獲したシーラカンスの冷凍個体
世界唯一といわれる深海をテーマにした水族館「沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム」。目玉は何といっても、3億5000万年前より生き続ける“生きた化石”シーラカンスが5体も展示されていること。
生きた化石? そうですシーラカンスは絶滅していないのです。現に南アフリカやタンザニア、コモロ諸島、インドネシアなどで発見されています。深海水族館に展示されているシーラカンスもコモロ諸島で捕獲された大変希少な個体。
1981年に日本シーラカンス学術調査隊がコモロ諸島の現地調査隊と協力して捕獲したもの。シーラカンスはワシントン条約の絶滅寸前種(第I類)に指定され、個体はもちろんのこと皮や骨、ウロコ1枚まで厳しく輸出入が制限されています。
それなのになぜココに? 実は第I類に指定される前に正規に取引された「国際希少野生動植物登録票」が発行されたもので、日本国内では、この5体にしか発行されていない非常に希少なシーラカンスなのです。
3体は剥製、2体は冷凍個体で展示。剥製であっても貴重なことに代わりありませんが、やはり経年変化に伴ってどうしても体表面が茶褐色を帯びてしまいます。その点、マイナス20度の展示室の冷凍個体は、海中で泳いでいた姿そのものを彷彿とさせる迫力。
青白い照明に照らされたシーラカンスは、体長170㎝ほど。灰色がかかった黒い姿、鎧のように硬そうな大きなウロコ、ギョロッとした目、鋭い歯をもった大きな口など、世界でも類を見ない冷凍個体のシーラカンスを数十センチの距離で見ることができます。
深海に生息するかわいらしくも“変な生き物”
この沼津に、なぜ深海水族館がと思われるかもしれませんが、沼津は駿河湾に面し、その最深部は2500mもある日本一深い海が広がっているから。その駿河湾の底引き網漁などで捕獲された深海の“変な生き物”が数多く展示されています。
深海水族館を運営しているのは、地元で100年以上も水産物卸売業・水産加工業を営む「佐政水産株式会社」。漁協や漁師との関係も深く、多くの珍しい深海生物が手に入るというわけ。
深海をイメージさせる、ゴツゴツとした岩肌と青い照明で照らし出される館内には、200種類3000匹ほどの魚が展示され、その中の100種類ほどが深海生物。
深海水族館の一番の人気者が「メンダコ」。この地球外生物めいたかわいらしいフォルム。足の半分以上を大きな膜で覆われたパラシュートのような形のタコで、吸盤が一列しかなくスミも持っていないのだとか。
深海生物ということで、水圧を含めた生息環境や生態に未知なる部分も多く、飼育展示するのも苦労が多いとのこと。
こちらは「オオグソクムシ」。フナムシやダンゴムシの仲間で、海底の動物の死骸や弱った生き物など、何でも食べる海のお掃除屋。危険を感じると胃の内容物を吐き出します。体長が最大50㎝にもなる「ダイオウグソクムシ」もお見逃しなく。
とぼけた表情を見せているのは「アカグツ」。体表の鋭いトゲは身を守るためのもので、泳ぎは少し苦手。胸ビレと腹ビレを上手に使い這うように移動します。
このほかにも砂から首を伸ばしているようなチンアナゴ、目の下が光る発光魚ヒカリキンメダイ、アンコウなどと、色も形も独特な、見ているだけで微笑ましくなる珍しい深海生物の姿を目の当たりにすることができます。
沼津港に面するようにある深海水族館は、「港八十三番地 http://www.minato83.com/」という港町をつくる一角にあり、周囲の飲食店では深海魚はもちろん、新鮮な魚介類の浜焼きやイタリアン、寿司などと、海の幸を存分に楽しむこともできます。
◆沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム◆
http://www.numazu-deepsea.com/
【住所】静岡県沼津市千本港町83
【営業時間】10:00~18:00
【定休日】なし(1月メンテナンス休業あり)
【料金】1600円
【アクセス】JR「沼津駅」南口よりバスで「沼津港」「沼津港食堂街」「千本港町」下車、徒歩すぐ
Photos (C)沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム (C)tawawa
記事は取材当時のものです。