伝統を守り伝える、つくり手のぬくもりを感じる器たち。福岡県「圭秀窯」が生み出す新たな小石原焼
圭秀窯の作品はあたたかみがあり、手になじむ器。どんな食卓にも似合い、日常をちょっぴり豊かにしてくれるような、そんな魅力があります。福岡の小石原の自然豊かな土地で、生まれる器たち。作り手の梶原久さんは33歳とお若いながら、精力的に作陶に打ち込んでいます。
さっそく梶原さんに圭秀窯の器の特徴について伺いました。
「東峰村には他には珍しく高取焼と小石原焼が存在します。先代、そして私自身陶芸を学び修行したのが高取焼です」
「高取焼の薄さと『綺麗サビ』と呼ばれる鉄さび分の入った釉薬を生かした飴色と、小石原の伝統である飛び鉋や刷毛目を生かした高取焼と小石原焼を融合した器を提案しています。小石原焼のようにはっきりした模様は出ませんが、料理を生かせるようシンプルに仕上げています」
梶原さんは18歳のときに陶芸の道に入り、15年ほどになります。東峰村の高取焼の伝統を活かしながら、日々新たな小石原焼を生み出しています。
圭秀窯らしい伝統を大切に想いを込めた親しみやすい器を作りたい、とおっしゃる梶原さんのアイデアソースのひとつは、器を手にとってくださったお客さまの声だそう。
「ありがたいことに器を使い感想をお客様から聞く機会が多いです。嬉しい言葉、改善してほしい点、そして提案。私達から日々の食卓が楽しくなるよう提案をしていますが、いろいろな方の声や想いを聞くことで新たな考えが生み出されることが多いです」
圭秀窯の器は料理の引き立て役にと考えて作られています。シンプルで使いやすい所が魅力でもあります。
「一般の家庭の場合女性の方がお料理をすることが多いと思うので、薄く軽く作ることで洗いやすく、形を工夫することで収納面にも配慮をしています。固定観念にとらわれず日常のスタイルに合わせて大きさも工夫しています。
昔ながらのものを若い方にも使ってもらいたいという願いも強いので、子どもの頃から箸置きを使ってもらいたい。女性や子供たちもワクワクするようなかわいいデザインからシックなものまで幅広い種類を作っています」
その他には、いま女性に人気の豆皿なども作られています。
「食卓にかわいらしさや癒しを感じてもらいたいと思い、いろいろな種類の豆皿も提案しています。また、塩壷や管理しやすいお櫃など日々の暮らしに何気なく在り使いやすく親しみやすいものを考えています」
日々の生活で親しみ楽しんで器を使ってもらうことが喜びですと梶原さん。手にとっていただいたお客さまにはあたたかい気持ちになってもらいたいそうです。
「お客さまに見てもらうときには仕上がっている器です。器が仕上がるまでに土づくり、作陶、削り、素焼き、釉薬かけ、本焼きと様々な工程をすべて手作業で行っています。とても時間がかかりますが、お客さまの手に届いたとき器に込めた時間や想いが伝わってくれると嬉しいです」
これからもずっと変わらぬ思いで、自分たちらしく圭秀窯らしく、お客さまと一緒に器について日々考え楽しんでいきたいそうです。
また伝統のものづくりに携わる立場として、子供達にも伝統や手仕事の良さを知ってもらいたいと梶原さん。
「我が子が生まれてからはこどもたちに向けての器も試行錯誤しながら作りました。使いやすさだったり用途に応じた大きさや形だったり、カップに関してはわざと大きめのサイズにしてなおかつ湯呑にしました」
「子供たちの小さな両手で包み込むようにして持たないといけない大きさと形です。両手で持つことで物を大切に扱ってもらいたいという願いを込めました。
壊れてしまうからもったいないではなく、親と一緒に同じ陶器を持つことで、子どもたち自身が認めてもらっているという気持ちをはぐくんでもらい、万が一壊れたときも大切にしないと壊れてしまうという心が育ってほしいと願っています」
あたたかい想いがこもった圭秀窯の器たち。ぜひ食卓に迎えてみてはいかがでしょうか。これからも日常に寄り添ったその作品に期待です。
こちらは、2017年6月5日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。