暮らしや仕事を美しく丁寧なものにする、「KAKURA」の竹綴じノートや文具たち。

 

日本人の暮らしに馴染む、重くならない軽やかなノートが欲しい……そうして生まれた“竹綴じノート”は、日本の素材を使って手仕事で綴じられた美しいノートです。「KAKURA」がものづくりの軸に据えているのは、すっと伸びる竹に見られるような日本人の精神性。

KAKURA

「素材や造形から、人の行動や使い方は決まっていくと思うんです。手仕事を通して、暮らしを心地よいものにデザインしていけたら」と、代表の石原ゆかりさん。

デザインに活かされているのは、石原さんの日常の中での気づきや直感。KAKURAのシステム手帳は、「革の手帳はずっしりと重くなりがち。日常使いを軽やかにするにはどうしたらいいだろう」という発想から生まれた、一枚革でできた手帳です。開くと、綺麗に処理された裏革が見えるので、合皮との見た目の違いは一目瞭然。閉じるときにクルクルと革ひもを巻く動作も、「手帳を開くときに少しだけ心のゆとりが持てるように」とデザインされたものです。

KAKURA | システム手帳

KAKURAの“用の美”は、オフィスの机の中に散らばる小物の整理や、鍵やアクセサリーの入れ物にも使える「革のトレー」にも表れています。

「真ん中に×印の装飾縫いを施すことで、ここを目印にものを置こうという無意識のイメージが働きます。佇まいが座布団のようにも見えるので、日本の暮らしに馴染むんです」

KAKURA | 革トレー

美しい手仕事に触れると、「丁寧な仕事をしよう、丁寧に人と向き合おう」という気持ちが自然に整えられていく気がしますね。

紙、土、革へと素材の幅を広げ、“用のデザイン”を兼ね備えた手仕事のプロダクトを展開しているKAKURA。その工房兼お店は、大阪の北摂(ほくせつ)と呼ばれる地域の富田(とんだ)というまちにありました。

KAKURA | 工房

KAKURAのお店を尋ねると、「地元の人にもあまり知られていないけれど、富田は古くから続くたくさんの酒蔵がある街だったんですよ」と、石原さん。富田では江戸時代より24の酒蔵が営まれてきましたが、現在は2軒に。美味しい「富田酒」の味は今でも健在です。

石原さんが大好きだという竹に縁取られたお店に入ると、大きなテーブルで職人さんたちが手作業をしていました。そして、棚には暦年のプロダクト商品がずらり。

人気のバッグインバッグ、お客さんのリクエストから生まれたお札を数えやすいお財布や、高級万年筆を持ち運ぶペンケースをもとに作られた丈夫なメガネケースなど、一つ一つのエピソードに話が弾みます。

KAKURA | 店舗 | 革 | ペンケース | めがねケース | 手帳

石原さんは工芸を学んでいたわけではなく、ものづくりは完全に独学なのだそう。

KAKURAを立ち上げるまで、企業内デザイナーを経て大阪の南森町でデザイン事務所を営んでいたそうです。仕事はグラフィックデザインが中心でしたが、竹綴じノートを作ってからは青山のスパイラルマーケットセレクションに出展したり、各地のミュージアムショップ、セレクトショップでコーナーを展開してもらいながら、手仕事の職人たちと協力して新たなプロダクトを展開させていきました。

KAKURA | デザイン

富田に工房を構えたのは、「子どもと一緒に暮らす家のそばで働きたい」と思ったことがきっかけ。やがて、歴史深く文化が薫る富田の魅力に気がつき、311の震災後に立ち上がった『日本全国マチオモイ帖』という、クリエイター目線で地元を見つめ直す取り組みに参加します。

酒造りに適した湧き水や、神社やお寺、野鳥が飛来する池などの知られざる地元の風景を、当時10歳だった息子さんの絵を交えてつづり、竹綴じにした「とんだ帖」。自費出版で制作したその本をきっかけに、石原さんは富田のお祭りやイベントにもデザイナーとして声がかかるようになっていきました。

KAKURA | 石原さん

連綿と続く歴史があり、静かで暮らしやすい富田のまち。暮らしの中でインスピレーションを受けながら、新しいプロダクトを生み出している石原さんや、富田の工房でものづくりを手がけるスタッフたちとともに、ずっと使えるKAKURAの「万年カレンダー」のように、これからも時を刻んでいくことでしょう。

KAKURA | 万年カレンダー

穏やかな秋田犬の竹遥(ちくよう)ちゃんもお店番しているKAKURAに、足を運んでみませんか?

KAKURA | 秋田犬 | 竹遥(ちくよう)ちゃん

 

記事は取材当時のものです。