「書くこと」をコンセプトにオリジナリティ溢れる文房具を提案する蔵前「カキモリ」
下町情緒溢れる蔵前に、一風変わった文房具店があります。商品は全て手にとって見ることができ、品揃え豊富な万年筆は全て試し書きができる。何と言ってもこのお店の特色は個性的な「オーダーノート」が作れるところ。ノートの紙は全て試し書きしてから購入することができるため、用途に合わせた「お気に入りの一冊」が見つけられること間違いなしです。
今回は、そんな「カキモリ」店主の広瀬さんにお話を伺ってきました。
広瀬さんは祖父の代から文房具店を経営していたのだとか。当初は東京で役所などに文房具の営業をしていたけれど、時代はネット通販主流になり方向転換をやむなくされる。そして圧倒的に文房具店が多い東京で、「専門店でしかできないこと」を考えて始めたのがこの「カキモリ」だったのだそうです。
カキモリを始めるにあたって、広瀬さんは文房具の本質である「書くこと」にコンセプトを絞ります。書くきっかけをもっと作りたい。そのために万年筆や、お気に入りのノートがあったら持ち歩いてもらえるだろうな、と考えたそう。そうして使ってもらうための文房具を集めたのが、今のカキモリなのです。
「書くこと」の楽しみが見つかるお店
カキモリの特徴は「すべての商品に触れて、体験できる」こと。値段と品質のバランスがいい国産の万年筆を始め、文具メーカーやデザイナーたちから生まれたユニークな文房具、こころ弾む色とりどりのオリジナルインク、そしてオーダーノート。
土日には行列ができるほどの人気のオーダーノートは、表紙や中紙を自由に組み合わせ、製本リングの仕様から留め具のオプションまで選ぶことができる。棚にずらっと並んだ紙は表紙が60種に中紙が30種類。スケジュールやダイアリー、アルバムなどのフォーマットも用意されていて、思わず用途について色々なイメージが膨らみます。
今回チョイスしたのはこちら。読書記録とトモエリバーの方眼紙。読書の記録をしたためるノートをちょっと贅沢にしつらえてみました。
「トントン、ガチャン」店内からは小気味いい製本機の音が聞こえてきます。
製本されて出来上がった一冊には、手に取った瞬間になんとも言えない愛着が生まれます。
こうして一冊一冊手作りされたノートは、使い終わったら表紙をそのままに中紙だけを取り替えることができるのだそう。
「長く使える」ことの心地よさ
広瀬さんは「長く使えるのが魅力です」と語ります。昔は可愛いものを買って、どんどん買い換えていくことが多かったけれど、今は革などの良い素材のものを選んで、中身を変えて使い続ける方が多いそうです。
オリジナルの一冊が作れることはもちろん、長く使えるということ。いいものを使い切っていくというよりも、いいものを使い続けていくことができるノートというところが、オーダーノートのもうひとつの魅力なのだそうです。
一冊のお気に入りを使い続ける。今のシンプルなライフスタイルにもかなったアイテムですよね。
ぜひ気軽に足を運んで
現代のスマートフォンの普及の影響もあり、手でものを書く時間というのはどんどん減っています。そんな中で、万年筆をはじめとした文房具は少しノスタルジックな感覚を甦らせてくれる、と広瀬さん。
「お店に来て何かを見つけよう、というよりは、気軽に来て楽しんでもらいたい。全部触ってみて、気になったらたまには文房具を新調してみたり。触れる、体験できる、というカキモリならではの魅力を味わいに是非気軽に足を運んでみてください」
これからのカキモリ
しばらくオリジナルの商品に注力していたため、本来の文房具店としての楽しさというものをもう一回見つめ直してお店に反映していきたい、と広瀬さんは語ります。それから台湾にも小さなお店があるそうですが、海外は総じて日本のように文房具の選択肢が多くはないのだとか。なので海外向けに日本の文房具の魅力を伝えていくのも非常に重要な役割だと感じているのだそう。
私も久しぶりに紙と万年筆で手紙を書いてみたくなりました。カキモリにはこだわりのレターセットも販売されているので、たまにはメールではなく、時間をかけて手紙を書いてみるのもちょっぴりていねいで豊かな日常になりますね。
記事は取材当時のものです。詳細はショップまでお問い合わせください。