1本の傘を大切にずっと使い続ける。ぬくもりのある傘を作る「イイダ傘店」
東京・吉祥寺にアトリエを構える「イイダ傘店」にはお客さまから愛される、心遣いと作り手としてのこだわりがあります。すべての傘をセミオーダーでひとつひとつお客さまからヒアリングしながら作っていることもあり、今はお届けまでに半年もの時間がかかるほどの隠れた人気店なのです。
イイダ傘店は店主の飯田さんが一人で始めたお店。もともとは大学でテキスタイルを学んでいた飯田さんが卒業制作で傘を作ったことがきっかけで、クチコミで人気となり、それではとオーダー会から販売を始めたそうです。
今では13年続くイイダ傘店は横浜から一昨年の春に吉祥寺に移転し、スタッフの数も増えました。それでも傘の制作がなかなか追いつかないほどの人気の秘密はなんでしょう?
アトリエにお邪魔してお話を伺ってきました。
まず感じたのは、お客さまとの距離感が素敵だなということ。販売もすべて作り手の方が行うので、ひとりひとりの使いやすさを考えて、相談に乗っています。
そんな細やかな気遣いもあり、親近感からファンになってくださるお客さまも多いのだとか。それでも、傘は何本も買い換えるものではないアイテム。特にイイダ傘店の傘は決して気軽に買える金額ではないので、みなさん年2回のオーダー会や即売会までにお金を貯めて、楽しみに足を運んでくれるのだそうです。
そんな想いの詰まった傘だから、1本を大切に使い続けることができるし、壊れてしまってもきちんと修理してもらえます。
編集部が今回のオーダー会にお邪魔するきっかけになったのは、なんとも愛らしい動物の持ち手の傘が魅力的だったため。
その動物持ち手の傘についてもお話を伺いました。
動物の持ち手は常に販売している訳ではなく、あくまでイイダ傘店でラインナップされている傘の一部として作ってきたもの。始まりは2010年、その後が2013年、そして今年2018年と、今回で3回目となりました。かわいらしい動物の持ち手シリーズは木工作家さんとのコラボレーションから生まれたもの。
また、普段販売している持ち手も日本の職人さんにお願いしたり、骨からボタン、プリントや刺繍、織りに至るまで、それぞれの職人さんがすべて日本国内で作っています。ひとつひとつ、いろいろな人とのご縁があって生まれる傘なのだなと感じました。
今回の持ち手は動物をモチーフにしているものが多く、それぞれの動物にストーリーがあります。傘としてコラボレーションする時には、そのストーリーに合わせてテキスタイルも考えているそうです。
そんな動物シリーズはやはりお客さまにも人気、今回のオーダー会でもたくさんの方が動物シリーズの前で傘を見ていました。どの動物がいいか、テキスタイルはどの色にしようか、何時間も迷う方も少なくないそう。
最後に、作り手としての喜びを伺いました。
こんなに傘を使っているのは日本だけとも言われていますが、日用品でありながら、ファッションアイテムとして使う人もいるアイテム。もちろんビニール傘が必要な時もあれば、それで充分な人もいる。
そんな中で当店の傘を選びに来てくださるまでには、お一人お一人のストーリーがあって、1本の傘を選ぶ理由も様々なら、どのような仕様にするかも人それぞれです。悩んで悩んで決めて頂いた大切な1本を、同じように大切に制作していくこと。
傘の完成までにはいつくもの工程がありますが、少しでも納得いかない部分があれば戻り、進んでは戻り、そうして納得のいく1本を制作しています。
「傘を差している時に他の方から声をかけられた」、「憂鬱な雨が今では待ち遠しいです」と言って頂けるのも嬉しいですね。また、そこから数年経って、「また使いたいので修理してください」と持ってきてくれるのもやりがいにつながるのだそう。
展示会では、傘の他に雨傘、日傘のテキスタイルを使用したグッズも数多く取り揃えられています。防水を活かしたポーチやリュック、特に傘の一片を使用した三角形のバッグは普段使いにも便利で、バリエーションも豊富です。その他、レターセットやご祝儀袋などの紙モノも並んでいます。
最後に、この記事を読んでイイダ傘店の傘に興味を持たれた方は、年に2回行なわれているオーダー会に足を運ぶか、全国で開催している現品販売会で購入することができます。
いつも販売しているものではなく、テキスタイルのデザインも毎年新作になるため、どの柄の傘に出会えるかその時その時のお楽しみ。実際に見て触って、質感や重さ、使いやすさなど確かめるのがおすすめです。
ぜひ、イイダ傘店の受注会でお気に入りの1本を見つけてくださいね。
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記事は取材当時のものです。