日本古来のろうそくを手づくりで守り続ける和ろうそく HAZE
川越で和ろうそくの工房兼店舗を営んでいるHAZEでは「はぜの実」を原料とする、全て手作りのろうそくを販売しています。そこには日本の伝統を守っていこうという信念と和ろうそくを知らない人にその存在を広めようという目標がありました。
今回はHAZEの戸田佳佑さんにお話を伺ってきました。
まずはお店に並んだ色とりどりのろうそくがとてもきれいで、女性ならきっと見入ってしまうこと間違いなし。間取りも古民家を改装した店内で、ゆったりとした空気が流れています。
HAZEは3人で活動を行っているそうです。男性2人が和ろうそくを手作りし、女性1人がデザインやパッケージを担当しているとのこと。活動は2012年から、川越にお店を構えたのは2015年だそうです。
ろうそくを川越で製造・販売しているのは、現代の人に受け入れられやすいろうそくというものを自分たちなりに研究して、ここを拠点に発信することが目的。元々衰退しているという現実もあって、その原因は結局和ろうそくの認知度がないからだと戸田さんは言います。HAZEは和ろうそくを知っている人が少ないというのもあって、和ろうそくの存在を広めていくことを主眼にしたお店なのだそう。
普通のろうそくは石油のパラフィンというものが原料で、蜜蝋は蜂の巣です。そして和ろうそくは「はぜ蝋」というものを使っていて、木の実が原料なのです。
室町時代、江戸時代に最も盛んに作られたろうそくだそうですが、最近になってソイワックスや、大豆からワックスがとれるという、植物性のろうが出てきました。ただ昔からあるろうで植物性というと、はぜ蝋が唯一昔の日本のろうそくの昔から作られてきた植物性のろうそくですね、と戸田さんは語ります。
HAZEでは色とりどりのろうそくが並んでいます。灯せば色の違いは関係なく、匂いも全くしないろうそくなのだそう。お仏壇を華やかに飾る方や贈り物として利用するなど、見た目の美しさはとても重要なことだとHAZEは考えています。
HAZEは弟子入りという方法を取らずに独学で作り始めました。歴史ある和ろうそく屋でないからこそ、今までにないカラフルな独自の和ろうそくを発信することができるのです。ただ現代の人は匂いのあるろうそくというのが頭にあるそうで、匂いはあるんですかとよく聞かれるそうです。匂いはありませんよと戸田さんは苦笑していました。
最近ではみなさん独自の使い方される方が増えていて、自分の生活の中でリラックスできる使い方をする人が多いのだとか。
おすすめは寝る前と朝起きた時。和ろうそくを発信しするうえで最も大切なことはろうそくの炎を見ながら、ゆっくりとした自分の時間を1日の生活の中で五分でも十分でも作るところだそうです。
和ろうそくの特徴は日が大きくろうが垂れないこと。洋ろうそくに比べればススも少ないこともあって、半身浴しながら灯す人もいるのだとか。戸田さんのおすすめは旅先でも宿泊先、ビジネスホテルに出張で泊まる時など、自分のスペース以外のところに長く滞在するときに、和ろうそくを持っていってそこで灯すと、そこが自分の空間になるということ。
そういうときに和ろうそくには匂いがついていないので、お香と一緒に和ろうそくを持っていって、自分が部屋で使っているお香を焚くことで、匂いと明かりでその空間が自分の空間になるというか。やっぱりどこか浄化されるとか、なんかそういう邪を払うという効果が、やっぱり火にはあると思うんですよ、と戸田さん。
この和ろうそくというのは、はぜの実を収穫して砕いて蒸して搾ると蝋が出ます。その蝋はすべて九州で作っているのだそうです。芯は和紙とイグサと真綿で作っていて、なので芯と蝋とろうそくというのは全部分業で全部別々の人が作っているのが現状。
和ろうそくは昔からろうと芯とろうそくの3つの分業で成り立っています。HAZEでは芯とろうを掛け合わせて、和ろうそくを作るポジションにいます。ろうの製造は全国にほぼ2軒、すべて九州で、福岡と長崎で作られています。特に芯は奈良県の1軒だけなのだそう。
今後ハゼの木を自分たちで育てて、ハゼの実を自分たちでろうにする。そして芯も芯でちゃんとイグサを自分たちで育てて、それを原料にした芯を自分たちで作る。そしてそのふたつを使って和ろうそくを作ること。全部自分たちで行う。それが最終目標なのだそう。
HAZEはろうそく作りだけではなく、ワークショップやお店を解放して人が集まれるようなイベントも開催しています。
見た目にも美しいHAZEの和ろうそく、女性に人気でギフトにも喜ばれそうです。是非一度足を運んでみてください。編集部でも購入して家で灯しています。
記事は取材当時のものです。