北欧デザインのように日常になじむ、「畑漆器店」の木と漆のうつわ
ふだん着のように、日常の中でさりげなく使える畑漆器店の木と漆のうつわ。漆は装飾のために施されることもありますが、もともとは木材に漆塗りを施すことで耐久・耐水性や防腐性を高め、日常づかいをすることで経年による艶や変化を楽しむもの。畑漆器店では、そんな「毎日のように使える」「いろいろな用途で使える」うつわを作っています。
畑漆器店のうつわは、日々の暮らしのシーンに馴染むものばかり。長く使いこむことでものへの愛着が生まれ、「使い手の日々の暮らしが少しずつ豊かになっていく」、そんなものづくりを目指しています。
2011年、「近年、若い世代にとって伝統的な漆塗りの器は使いづらく、デザインも古臭く捉えられて漆器離れが進んでいる」と感じた畑漆器店は、外部のデザイナーMUTEを迎え、カラフルで日常生活に取り入れやすいデザインの漆器を作りました。
そうして生まれたのが、今の畑漆器店を代表するcol.ブランド。シリーズの一つ「hako」は、どこか北欧を感じさせるシンプルなお重のようなデザインです。
デザインだけでなく収納力もあるので、「料理を盛る」ためのうつわとしてだけでなく、収納ボックスのように使えるのも魅力的。Mサイズは細々としたものを入れて「大人のお道具箱」に。Sサイズはいろんな種類のおつまみを盛って、晩酌のお供にほどよいサイズ感です。
好きな色を選んで、好きな場所で、好きな使い方ができる。でも、漆塗りの「hako」はやっぱり王道のお弁当箱に。などなど、「自分ならどう使おうか」と考えるのも、日常づかいを意識したデザインだからこそ。
「畑漆器店」は、1930年に初代・畑 卯之松氏が手塗り職人として独立し、二代目の畑 實(みのる)氏とともに漆器全般の販売をスタート。以来、伝統的な山中漆器の技法を継承し、暮らしに根ざす道具を作り続けてきました。
山中漆器の技法とは、原木を輪切りにする「縦木取り」で木材を切り出し、職人が手作業でろくろにかけて木肌をなめらかにする技法。木が重力に逆らって空へ伸びていく力を残し、原木の年輪に対して垂直に切り出されたうつわには強度があり、歪みや収縮に強く、ずっと長く使うことができるのです。
創業者の畑 卯之松氏の名前を冠した卯松堂ブランドは、昔ながらの手仕事のベーシックな魅力を感じさせてくれます。
木と漆のうつわを日常で使うと、いろいろな発見があります。たとえばお茶の時間。ガラスや陶器よりも木製のうつわは熱伝導率が低いため、アツアツのお茶を入れてもうつわが熱くなりすぎることがありません。また、冷たいものを入れても結露しにくいほか、口当たりも優しくなるのです。
col.ブランドの「KOMA」は、そんなお茶の時間にぴったり。見ての通りコマのような形で、ふたをソーサーとして、またはお茶菓子の受け皿としても使えます。見た目も可愛らしいので、小物入れやインテリアなど、いろんな用途で使うことができますね。
col.ブランドを展開したことで、海外からもたくさんの問い合わせが来るようになった畑漆器店。これからも伝統の山中漆器の技法を大切にしながら、世界中の人たちへ、日本の木と漆のうつわを届けていきます。
こちらは2020年3月2日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。