手しごとを継承する「HARIOランプワークファクトリー」の神秘的で繊細なガラスアクセサリー

HARIOランプワークファクトリー

 

ある日、セレクトショップのショーケースの中にすてきなピアスを見つけました。素材はガラスで、光を反射してきらきらとするさま、またその透明感に惹かれて店員さんに話を聞くと、テーブルウェアで有名なHARIOが作っているガラスアクセサリーですよ、とのこと。ひとつひとつ手作りされているというそのアクセサリーに興味が湧き、工房を訪ねさせていただきました。

 

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HARIO LAMPWORK FACTORY

2013年10月に開設された「HARIOランプワークファクトリー」は、HARIO創業者の柴田弘さんの「1921年創業時からの手加工技術の継承」という夢を実現させたもの。

 

茨城県に大きな工場を持つHARIOは現在機械化が進み、手作業の職人さんの姿も少なくなりました。そこで再び原点に立ち返り、HARIOランプワークファクトリーを立ち上げることで、手加工の技術を次の世代に残すため、ガラス職人の育成にも力を入れています。

 

HARIOランプワークファクトリーは日本橋にある、レンガの外壁がノスタルジックな工房兼ショップです。

 

HARIOランプワークファクトリー外観

 

それにしても、なぜ東京に工房を作ったのでしょうか。所長の根本さんにお話を伺いました。

 

「茨城の工場に職人の手加工の工房はあったのですが、立地的に人が集まりにくいのと、なかなかそこに住んで長く仕事を続けてくれる人がいなかったので、まず東京に作ろうという話になりました」

 

HARIOランプワークファクトリー内観
 

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東京から始まり、現在(2017年3月)では全国8カ所に拠点があるそうですが、メーカーとしての生産量を安定させる目的の他に、地方創生、雇用の創出の役割も担っているのだとか。

 

「一番初めに北海道の上川町の役場の方と縁があったのですが、女性のパート仕事は冬は自宅待機の方が多いそうで、そこでランプワークを冬の仕事としてぜひやってみたいと町長さまから言われ、HARIO が設備的な部分を協力し、地元の人への技術指導も行い、工房設立に至りました」

 

東日本大震災で避難区域となっていた福島県の小高にも工房がありますね。

 

「小高は去年の夏に避難解除されたのですが、夢のある仕事、女性の方が集まり楽しくできるような仕事をというお話があり、ここも一から工房を作ってスタートしました」

 

地方創生、雇用の創出も行っている、すばらしい取り組みです。ただ企業としてはそれだけではないと根本さんは言います。

 

「職人さんの仕事を継続して作っていくことで、職人さんの技術も伸びる、技術が伸びることで新しいデザインが生まれる、新しいデザインをお客さまに喜んでもらえる、それがビジネスになって、また職人さんの仕事ができる、といういいサイクルができる。それこそがメーカーが携わっている意味だと考えています」

 

HARIOランプワークファクトリーはこのモデルを2014年グッドデザイン賞(GOOD DESIGN AWARD)「ビジネスモデル・ビジネスメソッド」の分野に「職人の仕事をつくる」というテーマとして提出し、グッドデザイン賞2014を見事受賞します。

 

ガラス職人のランプワーク

 

ショップの横はガラス張りになっており、職人さんたちの作業の様子を見ることができます。バーナーの「ゴーッ」という音が響くなか、若い女性が多く働いているのが印象的でした。

 

作り手として働いている方は社員の方が2名、あとは技術を持ったランプワーカーがシフト制で働いているそうです。自分の加工技術を活かして、ここに来て仕事をし、さらに技術を伸ばすことができるのです。

 

HARIOランプワークファクトリー工房

 

「一度中国に製作を依頼したことがあったのですが、丸が楕円になってしまったり、なかなかうまく作れなくて。その点、日本の女性は繊細な作業に向いているのか、とても上手に作ってくれるんです」

 

「日本人の気質が活かされているのか、ガラス職人さんたちはそれなりに楽しいと思って黙々と作ってくれています。楽しんでやってくれているのは嬉しいことですね」
 

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HARIOランプワークファクトリーガラスのピアス

 

ガラスというのはアクセサリーには珍しく、オープン当初から人気が高かったため、今ではHARIOランプワークファクトリーの主力商品となっています。

 

「ガラスという素材の先入観なのか、お客さまも結構「夏に良いわね」という意見が多いんです。でも1年中つけていただきたい。うちは無色透明でやっているので、自然に身につけていただけるのが良いところだと思います。服や人を選ばずにつけていただけるデザインというのが特徴でもありますね」

 

空気の透き通った冬にニットと合わせてもすてきですよね。ガラスの透明感と光が交差してきらする様子は、いつ見ても美しいもの。

 

HARIOランプワークファクトリー商品

 

「磨いたりせず、ガラスの素材を形にするのがひとつの特徴なので、宝石などに比べると、ガラスそのものの素材感が活かされていると思います。光の反射がきれいなので、華やかさと価格を考えれば新しいジャンルのアクセサリーになるかなと考えています」

 

また熱に強く加工性に優れた耐熱ガラスを作るメーカーは国内にHARIOしか残っていないのだそう。

 

「国内でガラスを溶かして耐熱ガラスを作っているというのはHARIOだけなんです。その特徴、加工性がいいという特性を十分に活かしてアクセサリーを作る意義が僕らにはあると思いますね」

 

元来の得意分野を生かして、新しい価値を創出する。HARIOランプワークファクトリーの挑戦はこれからも続きます。

 

「いろいろな方のお手元に届くように。まだまだこれから販売の方はもっと力を入れてやっていかないといけないです」

 

「お客さんが喜んで買ってもらえるものがないと、いくら技術があっても仕方ないので。お客さんが喜んでもらえるものを作っていくというのが原点ですね」

 

手しごとを守るために生まれたHARIOランプワークファクトリーは、ビジネスモデルとしても優れた役割を持っていました。これからも職人さんたちの手しごとで生み出される作品の数々に注目していきたいですね。

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こちらは、2017年3月21日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。