架空の世界をモチーフにした木工作品 「木工房 千舟」の魅せるやさしいぬくもり
知らない風景なのに、どこかで見たことがある、そんな感覚を覚えたことはありませんか?ひと目見たらどこか懐かしいような、ぬくもりのある木工作品を制作している「木工房 千舟」の岩宮千尋さんにお話を伺いました。岩宮さんの世界観はとてもやさしくて、かわいらしい、思わず手にとって撫でてみたくなるような、そんな雰囲気を持っています。
岩宮さんはもともと舞台美術を勉強したいと思い美大に通っていました。そこから専門分野に分かれる時期になったとき、「自分は一人で黙々とものを作ることの方が向いている」と感じ、木工やインテリアを学べるゼミに入ったそうです。
いまのような作品を作るようになったきっかけを伺うと、卒業とともに木工雑貨を製造販売する会社に入社し、そこで木工に関して一から教えてもらい、商品開発まで携わるようになったそうです。それまでは絵や簡単な木工で作品を細々と作っていたのですが、木工でもっと本格的に自分の世界を表現したものを作りたいと思ったのがこのころ。
『架空の国を旅する人が見た不思議な風景』というのが大きなコンセプト。
木象嵌(もくぞうがん)で作る絵や建物モチーフの作品などはこのイメージを中心に作っているそう。
もともと住み慣れた場所と文化も価値観も違うところに旅をすることと、そこで素敵な風景や建物を眺めることが好きな岩宮さんは、自然と木工でそれらを表現するようになりました。
現在は風景や建物以外にも女の子や鳥などの可愛いものにも興味が湧き、作品を制作しています。どれもやさしくてかわいらしい、おとぎの国に登場しそうな存在感がありますね。
制作にあたってとくにこだわっている部分は、常にいろいろな種類の色や木目の木をストックしておいて、作る作品によって一番合う木を選んで作ること。なかでも様々な色や木目の木を組み合わせて作る木象嵌の作品は木目や色味の印象が大切なので真剣です。
素材は一期一会。なので使い所を見極めて使っていくことに力を注いでいるそうです。
さらに人形や動物たちを木工旋盤を使って制作するときは、ふっくらとかわいらしいフォルムを追求しながら作ることにも力を入れています。
作品をお迎えいただいたお客さまには、生活空間の中での癒しになるような、愛着がわくような作品を作りたいと思っているので、日常生活の一部になってほしいと思っているそう。
風景を切り取った木象嵌の作品たちは、自分がその不思議な空間に入って不思議な建物や大粒の星々や巨大な天体を眺めている旅人のような気分で見てみるとちょっぴり非日常に浸ってひとときの癒しになるかもしれませんね。
今後はもっとたくさん美術芸術工芸について勉強したり、さまざまな世界に出かけて行って街や自然を見たり、それらをアウトプットして平面作品や立体作品をもっと増やして、いつか個展を開くことが目標。その目標に向けて、大きい作品作りにも挑戦してみたいとのことでした。
最後に、これからも自分が胸を張って「好きだ」と思えるものを木工で作り続け、可能な限り追求し続けたいと思います。と締めくくってくださいました。
まだまだ深く広がっていく岩宮さんの世界から生み出される作品が楽しみですね。見たことのない景色で感じる、異邦人のようなスケールは日常の小さな煩わしさを忘れさせてくれそうです。ぜひその世界感を味わってみてくださいね。
記事は取材当時のものです。