日本から台湾、そしてカナダへ……世界がひろがる「TSUCURITE」のお菓子たち

TSUCURITE | お菓子

 

ガトー梅干しショコラ、ガトーいちじくグリーンカレー、たけのこの山椒抹茶ケーキ、グリンピースあんココナッツ饅頭……などなど、そのときの旬の素材を組み合わせた料理のようなお菓子たち。野菜を使った焼き菓子は最近ではあまり珍しくないけれど、「TSUCURITE(つくりて)」のお菓子には、見たことのない素材の組み合わせがもりだくさん。実はそのベースには世界の食文化が見え隠れしており、驚きや発見とともに私たちの世界を広げてくれます。

TSUCURITE | TSUCURITE国分寺店 | 古民家 | 店舗

国分寺駅から徒歩5分にある、古民家を改装した「TSUCURITE国分寺店」は、店主の會田由衣(あいだ・ゆい)さんの祖父母が暮らしていたお家だったそう。TSUCURITEは東京の国分寺と神奈川の厚木にお店を構えており、平日に厚木店のキッチンでお菓子を製造、金〜日の週末に2つのお店を開けているそうです。

TSUCURITE | 店主會田由衣(あいだ・ゆい)さん

店主の會田さんは、大学は建築学科を卒業し、もともとは広告会社で働いていたそう。「“鬼子母神の手創り市”に出たい」と思ったことが、お菓子屋を始めたきっかけでした。

念願の鬼子母神の手創り市に出店を果たしてから、TSUCURITEは全国のマルシェやイベントへと活動の幅を広げていきました。マルシェの出店にも慣れてきた頃、「海外のマルシェってどんなものなんだろう」と調べていると台湾のマルシェが目に入り、たまたま出店している日本人のブログが見つかったので、會田さんはすぐさまコンタクトを取りました。

「もともと、外国へ旅に出て、知らない料理を食べるのが好きでした。言葉なんか通じなくても、同じテーブルで料理を囲むだけで、おいしいね、楽しいね、と現地の人とコミュニケーションが取れるし、知らない料理や食材との出会いから世界が広がっていくのが嬉しくて」

TSUCURITE | お菓子 | アート作品

2014年、台湾のイベントに初出店。台湾ではトマトが果物売り場に並び、まるでイチゴのようにお菓子づくりに活用されているそう。台湾での出会いがつながり、2017年にはカナダで開催される「Taiwan fest.」にfood painterとして招待されました。カナダでは、お菓子はアート作品、その作り手はアーティストとして扱われているそうです。

會田さんは、カナダで2ヶ月間現地スタッフと共に生活し、現地のスーパーやマーケットで食材に触れながらインスピレーションを膨らませて、本番では“お菓子で自然を表現する”デモンストレーションを手がけました。

TSUCURITE | Taiwan fest. | food painter

海外のマーケットで様々な食材に触れ、人々と交流し、共同生活をしながら現地の文化を吸収し……知らなかった食文化や素材の使われ方に触れることで、お菓子の表現もさらに自由なものになっていきました。

TSUCURITE | チョコサンドビス

そんなTSUCURITEのお菓子は、一見素朴で可愛らしいけれど、素材の組み合わせに驚かされます。ころんとしたマカロンのような3色のチョコサンドビスに使われているものは、なんとお花。

チョコサンドビスには、お花(マリーゴールドココア、マローブルー、ラベンダー抹茶)と、お野菜(ココナッツたけのこ、玉ねぎココア、梅抹茶)の2種類があり、お花や野菜の濃厚な香りに甘いチョコレートがほどけます。

TSUCURITE | ムーンケーキ

台湾で「月餅(げっぺい)」の焼き型と出会ってから作り始めた「ムーンケーキ」は、かぼちゃ、スイートポテト、梅干しの3種類。おめでたい日の贈り物にするのが本場流です。

TSUCURITEでは、野菜や果物をパウダー状にしたものではなく、地元の農家さんのとれたての作物を使ってお菓子作りをしています。同じ野菜でも、農家さんによって味が違ったり、時期によって水分量も変わったりするので、「いつでも全く同じ味」というわけにはいかないそう。けれども、素材の持つ個性も含め、作り手の味をそのまま引き出すことが「TSUCURITEにしかできないこと」だと、會田さんは考えています。

TSUCURITE | お菓子

海外でのイベント出店にも慣れてきた頃、會田さんは「ひとつの街に根ざして、お店を構えてみたい」と思うようになりました。

「厚木に家を建てることになり、その一階を店舗にしようと準備していましたが、工期が大幅に押してしまって。国分寺の祖父母の家が空くことになったのはそんなタイミングでした。空き家になるくらいならお店にしようと思って、今、2つの場所でお店を開いています」

金・土・日の週末だけ開く2つのお店は、台湾茶と健康茶のセレクトを手がける「chaRica(チャリカ)」のミネオマイコさんや、會田さんのお母さんや叔母さんが手伝っているそうです。

TSUCURITE | お菓子

「“これはなんだろう”というような、インパクトのあるものから売れていくイベントとは違って、お店に来るお客さんは暮らしになじむお菓子を求めることが多いんです。なので、お店では棚を「Gift」と「Daily」に分けています」

「Dairy」の棚に並ぶのは、まちのパン屋さんのようにほっとするお菓子。旬の素材を使うので、その週にしか並ばないものもあり、楽しみにしている常連さんもいます。

TSUCURITE | つんつんのしっぽ

會田さんの愛猫がモチーフのぐるぐるクッキー「つんつんのしっぽ」は、子どもに大人気。小さい子の手のひらほどの大きさがあり、食べ応えたっぷり!

「まちのお菓子屋さんは大変なことも多いけど楽しいですよ。次は、このまちに根ざしたマルシェを立ち上げようかな」と會田さん。ときには海外でお菓子づくりの可能性を広げながら、地元の食材や人との出会いを大切に、TSUCURITEの世界はどんどん広がり続けています。

 

 

記事は取材当時のものです。