誰かをちょっぴりワクワクさせるものづくり tomo co monoの革財布の世界

tomo co mono

 

ハンドメイド作家の「tomo co mono」の作品はかわいらしい世界観が特徴のレディース財布を制作されています。女性の手になじむように工夫されたお財布は使い勝手も良く、随所にあしらわれた刺繍がなんともいえない親近感を覚える作品です。一度手にしたら愛着が湧くこと間違いなしの、tomo co monoさんの作品作りについて詳しく伺いました。

 

tomo co monoの制作者である伊藤朋子さんは、家政学部で被服を勉強したのち、靴作りの世界へ。婦人靴メーカーや、義肢装具会社で靴作り、とくに革靴の縫製をしていたそうです。

 

ご結婚後、田舎に住まいを移すことになり、本格的な靴作りができない生活が物足りなく、製甲の靴職人として、腕を磨くためにお財布作りが練習になると知り、空いた時間に革財布を作り始めるようになりました。

 

tomo co monoと最大の特徴は革にミシンでオリジナルの刺繍を施している点。これが独自の世界観を醸し出していて、女性の心を掴んでいます。

 

tomo co mono

 

靴職人としてスタートした始めの年に、端革にひたすらグルグルグルグル1.5ミリ間隔で縫い続けることをしていた時期があったそうです。そのときは早く靴の作り方を覚えたかったので辛いと感じたこともありましたが、自在にミシンを動かせるようになったきっかけでもありました。

 

作品からも想像がつくかもしれませんが、革の色に合わせて刺繍に使う糸は時間をかけて選んでいます。

 

tomo co mono

 

革に対して合わせる糸の少しの違いが出来上がりの表情にとても影響するので、毎回革の良さを一番引き出すデザインと色の組み合わせに試行錯誤します。tomo co monoのお財布は革素材の扱いやすさに加え、刺繍や内布との色の組み合わせを手に取ったお客さまに楽しんでもらえるよう心がけているそう。

 

tomo co mono

 

お客さまの感性はそれぞれ違うと思うので、できれば楽しんで使ってもらいたいとは思っていますが、必ずこのように感じてほしいと押し付けることを伊藤さんは望みません。

 

より多くの方に魅力を感じてもらえるようなものを作りたい、自由に作りたいものを作りたいという気持ちもありますが、売れないと困るのも事実なので、独りよがりなものづくりにならないよう、でも、ときどき羽目を外すこともあると思います、と作り手ならではの心の内を語ってくださいました。

 

今後の目標は自分の作ったお財布を使ってくださるお客さまが、少しでも前向きになれたり、行動したくなるようなものづくりをできるようになりたい。

 

手間をかけるものづくりが仕事として成り立たなくなり、手間をかけたものが多くの人には求められなくなった時代の中で、なるべく長く作り続けること。

 

伊藤さんの作品は日常生活に必ず求められるものではないかも知れませんが、思いを込めてものを作る人がいなくなり、丹精込めたものを見つけられない時代は味気ないように思います。

 

現代ではまだものを使い捨てにする、という考え方がそこかしこにある気がしますね。そんな中でtomo co monoはひとつのものを愛着を持って使い続ける、そうしたすてきな感性を与えてくれる、そんなものづくりをしているのですね。

 

tomo co mono

 

tomo co monoのロマンチックな世界観から、伊藤さんがお財布に描くような世界で毎日を過ごしているのではないか、と思われるかもしれませんが、そうではありません。

 

逆とまではいきませんが、毎日同じ風景ではつまらないので“こんなふうだったらいいのにな”という思いがお財布として形になっていったのだそうです。

 

伊藤さんの想像力豊かなものづくりは、作品を手に取る私たちをワクワクさせてくれますね。大切に作られたものを大切に使う、そんな豊かさもすてきだと感じました。

 

記事は取材当時のものです。