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物語のあるモノと暮らしマガジン

科学館で出会う、新しい世界への扉 日本科学未来館が魅せる未来とは

日本科学未来館 宮原さま

東京 お台場にある「日本科学未来館」は「先端の科学技術」をテーマにした、2001年オープンの先進的な科学館です。ただ展示を見学するだけではなく、足を運んだお客さま自身が見て、触って、考えるという、新しい気づきや発見を促す場を提供しています。とくに有名なのが3Dのプラネタリウム作品などを上映するドームシアターですが、それ以外にも随時企画展や、豊富な常設展などのコンテンツを発信しています。

 

この度、2018年6月20日に常設展を含めた展示が一部リニューアルされたと聞き、展示開発課マネージャーの宮原裕美さんに直接お話を伺いました。

 

日本科学未来館 宮原さま

 

展示を作り出すうえで大事なもののひとつに、コンセプトメイキングがあります。特に意識するのは、来館者の皆さんがその展示を体験したあと、どうなってほしいか?ということです。展示の体験を通して、その人にどんな意識の変化をもたらすか、を大切にしています。

 

未来館では、来館者が展示を通して新しい科学技術の知の結晶に出会い、その科学技術とどう付き合いながら、私たちの未来を築いていくのかを考え、次の行動につなげていってほしいと願っています。「問い、考え、アクション」と呼んでいるのですが、来館者の中にそうした一連の行動が生まれることを目指し、展示を組み立てています。

 

オルタ 日本科学未来館

 

また、展示を制作していく過程では、第一線で活躍する研究者を監修者に迎え、展示を一緒に制作していきます。その際には、研究者がどんなことを考えて研究に取り組んでいるのかが伝わる展示になるように心がけています。研究者は私たちが気づかないような視点で世界を捉えています。そうした世界観やビジョンは、私たちに新しい気づきをもたらします。来館者には、展示を体験することで、新しい気づきがしっかりと心に残るような展示を提供していきたいと思っています。

 

6月20日にリニューアルオープンした展示のひとつが、メディアラボです。定期的に展示が入れ替えられるこのメディアラボ、第20回に紹介するのは、「人工生命」の研究。誰もが一度は耳にしたことがあるかもしれません。そんな研究をこのメディアラボでは、アート作品を通して「生命とは何か?」を私たちに感じ、考えさせる場となっています。

 

科学館なのにアート?と感じる方も少なくないと思います。その問いに宮原さんは、アーティストと科学者は自分の中からとても鋭い問いを作り出すことができる。その鋭い問いを素晴らしい作品や研究で訴えていく点で、両者は似ていると思います、と語ってくださいました。

 

今回のメディアラボを監修されている池上高志さんは東京大学大学院総合文化研究所教授、という肩書きをお持ちの方ですが、「生命とは何か?」という問いに対して、科学研究だけでなく、アートの手法も使ってアプローチしているそうです。池上さんは科学とは説明可能で実現可能なものだと語りますが、一方で池上さんは今の科学研究ではどうしても説明がつかないものも大事にしています。

 

アート作品は、時に言葉では説明できないような圧倒的な力を持って、鑑賞者の心に直接訴えてくることがあります。池上さんは、研究者でありながら、そうしたアート表現も用いて、壮大な問いを多角的に研究しているのです。

 

日本科学未来館 宮原さま

 

「生命とは何か?」の問いになにを感じますか?きっとそれぞれ考えて、自分なりの答えを導くことができる人も、もやもやしてしまう人もいると思います。

 

でも、それでいいのです。どう感じるかは自由。

 

生命は予測不可能で、複雑なものです。この展示では、問いについて考えるためのたくさんの異なる視点を提供しています。

 

「『生命』になりたい!ブルックスのジュースを探して」 という展示タイトルに登場する「ブルックス」は、みなさんご存知の掃除機ロボット「ルンバ」の生みの親である研究者の名前にちなんだもの。生命らしきものはあるが、生命になるにはまだ何かが足りない。「あと一滴」が加われば、それはきっと生命になれる。でもその一滴とはなんだろうか?その最後の要素のことを池上さんが「ブルックスのジュース」と呼んだことから来ています。

 

メディアラボではその「最後の一滴」が何なのか?を考えながら見ることができます。池上さんからの問いに対して、それぞれのアーティストやクリエイターが考える「最後の一滴」も展示しています。

 

メディアラボ 日本科学未来館

 

また同じフロアにある零壱庵でも「生命とは何か?」を問うアート作品を展示しています。これからの未来、AIなどの発達によって生命と非生命の境界があいまいになるかもしれない。そんな時代を生きている私たちに、アートを通して「生」と「死」を考えさせます。

 

今回の展示は現代美術家 宮島達男さんの作品。作品名は「Life(Ku-wall)no.6」、「死」をテーマにしています。見た目は人工的でデジタルな数字の羅列なのですが、数字は周囲の数字と関係しながらカウントが進んでいきます。作者自身にもわからないタイミングで数字が消滅し、それらが「死」を迎えます。そして作品を鑑賞しに近づいてくる来館者と連動してまた「生」を迎えます。

 

《Life (Ku-wall) – no.6》 宮島達男 2014

 

まるで生命のように変化し続けるデジタル数字のアルゴリズムを制作したのは、先ほどの池上さん。宮島さんの作品と一緒になることで、新しい表現が生まれました。

 

もうひとつのリニューアルが、フロンティアラボと呼ばれるエリア。ひとことで言うと、宇宙や深海の最新研究とその成果が垣間見える、「ロマン」のある展示です。

 

フロンティアラボでは、未知の領域に挑む日本の研究所、海洋研究開発機構(JAMSTEC ジャムステック)、はやぶさで有名になった宇宙航空研究開発機構( JAXAジャクサ)、国立天文台などから最新の研究データなどを提供してもらい、紹介しています。

 

未来館 フロンティアラボ

 

なので、フロンティアラボに足を運べばこの3機関の最新の情報が一度に見られる。スケールの大きい研究を通して、研究者が見ている世界を一緒に共有できたら、と宮原さん。

 

ここまで読んでいただいて、難しいなと思う方もいらっしゃるかもしれません。けれど、来館していただけることでいままでになかった新しい視点をたくさん得ることができて楽しいですよ、と宮原さんは語ります。

 

実はそんな宮原さんは、科学のバックグラウンドは無かったのだそう。美術史を専門に勉強していた、そんな自分が展示の企画制作を通して、科学との出会いを楽しんでいる。だからこそ、科学に触れる機会が今まであまりなかった人たちにもぜひ来てもらいたい。未来館で今まで気づかなかった新たな視点を得て、明日を楽しく生きるヒントを得てもらえたら嬉しいです。宮原さんはそうお話してくださいました。

 

最後に、宮原さんにこれからの目標を伺いました。

 

宮原さんが今後特に力を入れたいなと思っているのが、これから社会に出て行く10代の人たちへのアプローチです。「こういう未来にしたい!」という若者の前向きな気持ちをもっとサポートして、社会に積極的に関わろうとする人材を育てたい。それに対して未来館ができることをいろんな角度から考えていきたい、そう語ってくださいました。

 

日本科学未来館

 

日本科学未来館は、科学をいろいろな形で目に見えるようにしたり、最新の研究成果が見せてくれる新しい「世界」と触れ合ってわくわくしたりすることができる場所です。自分の知らないことを知ることって、なんだかわくわくしませんか?

 

思わず考えるのをやめてしまいたいとき、ここへ足を運んでみてください。きっと新しい発見が自分を明るくしてくれるはずです。これからの未来を、地球上で人間らしく生きていくために、ほんの少しでも自分が変われたら。きっと素敵なことが起こるに違いありません。

 

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