夜の5時から開くノスタルジックな文具店、「ぷんぷく堂」が愛される理由

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 店舗 外観

 

千葉県は市川市、京成八幡駅から線路沿いを少し歩いた場所にある「ぷんぷく堂」をご存知ですか?閑静な住宅街で、夜の5時から開店するという一風変わった文具店なのです。扉を開けばそこにはノスタルジックでわくわくする世界が広がります。遠方からもファンを集めるちいさな文具店の魅力とは?今回はぷんぷく堂の店主・櫻井有紀さんにインタビューをさせていただきました。

 

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ぷんぷく堂 本八幡 文具店 赤提灯

入り口には“文具店は夜開く”と力強く書かれた赤ちょうちんが灯り、店名入りのレトロな自転車が一台。お店に入る前から期待が高まります。まるで絵本から出てきたような真っ赤な扉を開くと、そこにはさまざまな文具が所狭しと並び、そして店主の櫻井さんがあたたかい笑顔で迎えてくださいました。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 櫻井さん

鉛筆にノート、マスキングテープなど、私たちに馴染みのある文房具がずらり。決して広いとは言えない店内ですが、なぜか居心地が良く、ずっとお話ししていたくなるような不思議な気持ちになります。早速、櫻井さんにお店を開かれたきっかけについてお聞きしました。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 店内 鉛筆

「よく『文具が大好きなのですか?』とか、『文具マニアなのですか?』と聞かれるのですが、決してそういうわけではなく、人並みに好きという感じでしたね。ですが、昭和の鉛筆はなぜかとても好きで、それだけは何千本と集めていました。その鉛筆を売ろうと思ったのがお店をはじめたきっかけでしょうか」と、櫻井さん。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 店内 鉛筆

それも納得、店内には200種類にも及ぶ個性豊かな色柄の鉛筆が並んでいます!これらを見て、幼い頃に個人商店の文具屋に行ったときのような、とても懐かしい気持ちが蘇りました。並んでいる鉛筆はすべて一本売りで、ダースでの販売はしないのだとか。随所にこだわりを感じられるお店ですが、そのコンセプトについて伺ってみました。

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ぷんぷく堂 本八幡 文具店 ミニチュア

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 ミニチュア

「店主の目利きしたものを扱う夜の文具店、でしょうか。オープン時間のことに関して正直にお話しすると、『夜しか開いていない文具店にする!』と決めてはじめたわけではなく、以前は日中に別の仕事をしていて、文具店に割く時間が夜しかなかったので…それが理由なのです。今はおかげさまでお店一本でやらせていただいていますが、夜オープンというスタイルは変えていません」

そんなぷんぷく堂は文具メーカーとしても注目を集めています。店内には櫻井さんのセレクト文具が並ぶほか、オリジナル商品も並んでおり私たちの目を引きます。しかも思わずくすっと笑みがこぼれてしまうような面白いアイテムばかり。これらのアイデアはどんなところからやってくるのでしょうか。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 店内 オリジナル

「『こんな商品があったらいいな』というアイデアは、常に頭の中に5~6個風船のように浮かんでいます。例えば展示会などに行って町工場さんとお話しする機会があると、『こんな技術があるんだ!じゃあうちとこんな文具が作れちゃうかも?』と、風船がひとつ降りてきてアイデアが具体化することがあります。

デザイン画を描いたり、専門のソフトを使ったりということは一切できません。私のアイデアを形にするときは、いつも工作用紙。手に持ったときの大きさや、形、実際に自分が使うときのことを考えるとこれを使うのが一番なんです」

とても楽しそうに語る櫻井さん。そのアイデアを形にする、商品づくりにおいてのこだわりについてもお聞きしてみました。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 過保護袋

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「常に私が欲しかった文具を作っています。そして、それはほとんど私の失敗から生まれています。例えば鞄の中に文庫本を入れていると、本の間に物が挟まってしまったり、本が折れてしまったり、苦労したことありませんか?それを解消するために生み出したのがこの“過保護袋”なのですよ」と櫻井さん。

“過保護袋”はぷんぷく堂のオリジナル商品のひとつで、ジーパンのタグ素材でできたとても丈夫な袋。文庫本に限らず、通帳や振込用紙、領収書等、鞄の中で折れて欲しくないあれこれを保護してくれるアイテムなのです。続けて櫻井さんは語ります。

「このような自分の体験した失敗談や、商品ができたストーリーをお客さんに話すことで共感が生まれます。いわゆる売れ筋商品だとか、儲けを狙ったような商品はあえて作りません。例えそういったものを作っても、自分の想いが入っていないと売れないから。自分で伝えたいものづくりをした方が多くのお客さんの手に渡ってくれる、そう感じています」

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 グラス

そう語る櫻井さんに、お店を経営される上で大切にされていることについてもお聞きしたところ、“商い人”、つまり手から手へ売る商売をすることだとお話ししてくださいました。文具こそ自分の手から買ってほしいのだそうです。

「ぷんぷく堂は夫婦で経営をしていますが、店頭に立つのは私だけです。というのも、SNS(Twitter、facebook、Instagram、LINE@)はすべて私が運営しています。SNSの中の人として皆様に発信していますので、私がお店に立たなくては意味がないですからね。わざわざ会いに来てくれる方のためにも、そこは譲れません」

複数のSNSまでテキパキこなすお姿にとても驚きました!また、現在Amazonにてウェブショップも持たれているぷんぷく堂。そこでお買い物すると櫻井夫妻の粋な心遣いを発見できるのはご存知ですか?なんと手書きのメッセージ付きなのです。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 ぷんぷく通信

また、毎月刊行されるというこちらの“ぷんぷく通信”も。文字は全て櫻井さん、そして左上の挿絵は旦那様が手がけられているのだとか。このウェブショップ、そして本八幡にある1店舗を大切にしたいと考えているそうで、ご夫婦からお客さんへの愛がひしひしと伝わってきます。

すっかりぷんぷく堂の持つ魅力に惹かれてしまいましたが、ここで櫻井さんにおすすめ商品をいくつかご紹介していただきました。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 あなたの小道具箱

まずはこちらの“あなたの小道具箱”。50年は持つと言われる丈夫で頑丈な紙素材、パスコを使用し作った小道具箱です。都内にある町工場さんに頼んでひとつひとつ製造してもらったのだそう。2017年の日本文具大賞デザイン部門グランプリを受賞しました。

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ぷんぷく堂 本八幡 文具店 ミニッパチ

続いてこちらの“ミニッパチ”。小道具箱と同素材のパスコを生かしたバインダーメモです。パスコを金型でくりぬいて小さなバインダーに。65gと超軽量なのでポケットにも入れやすく、いつでもどこでも書き込める手のひらサイズのかわいらしいメモです。

そして先ほどご紹介した“過保護袋”。大切なものを鞄の中で過保護してくれる人気アイテムです。

ネーミングセンスにも驚かされる数々のアイテム、どれもすてきなものばかりです。そんなぷんぷく堂に来店されたお客様、そして商品を実際手に取ったお客様にどんなことを感じてもらいたいかをお聞きしてみました。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 ノート

「夜しか開いていない文具店というのは、自分勝手な気もしていますが、それでも笑顔で帰ってくださるお客様を見るととてもありがたく、嬉しくなります。お客様がぷんぷく堂をより良いお店に変えてくれている気もしています。

ぜひ気軽に、ここに来たら何か面白いものがあるんじゃないかと、宝探しのような感じで来ていただければと思っています。引き出しを開けて、眠っている文具を探してみてください」

そうお話されるように、店内にはたくさんの引き出しが。開けるとそこから商品が顔を出し、本当に宝探し気分でとても楽しいのです!最後に、櫻井さんがこれから挑戦したいことについて伺いました。

ぷんぷく堂 本八幡 文具店 紙雑貨

「今まさに準備中なのですが、楽天市場で新たに公式ウェブショップを開こうと進めています。私たちはものづくりのストーリーを少しでも多くのお客様にお伝えしたいと思っています。

ウェブショップでも実店舗と全く同じように、というのは難しいかもしれませんが、できるだけひとつの商品ができるまでの過程をお伝えしたいのです。パワーアップしたウェブショップを制作中なので、もう少し待っていてくださいね」

櫻井さんのあたたかいお人柄に癒されながら、終始楽しくお話しを聞かせていただきました。普通の文具店とはちょっぴり違うぷんぷく堂。櫻井さんとの何気無い会話から生まれる、ほんわかしたムード。ここでしかできない経験もぷんぷく堂ならではの魅力なのだと感じました。

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こちらは、2019年1月16日公開の記事を再編集して公開しました。記事は取材当時のものです。