あたたかなコミュニティがうまれる場所。国際結婚と養子縁組の先に ー ワカコ・ラヒーストさん

ワカコ・ラヒースト リビング

 

現代を自分らしく生きる女性たちにフォーカスし、彼女たちの仕事や生活についてインタビュー!特集第4弾は、日本でアメリカ人男性と結婚し、のちに養子縁組で男の子をむかえたワカコ・ラヒーストさん。働くこと、家族のことについてお話を聞かせていただきました。

 

ワカコ・ラヒースト コーヒー

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閑静な住宅街に佇むご自宅は、ウッドを基調にした明るくて開放的なリビングがすてきな、とてもあたたかみのあるお家です。旦那様のデイビッドさん、お子さんのユウタくん、そして3匹の猫ちゃんと一緒に、アットホームな雰囲気の中お話しをさせていただきました。

 

大阪生まれのワカコさん。1年半ほどのバックパッカー期間を経て、現在は関東に居を構え、外資系航空会社にて働かれているというユニークな経歴の持ち主。14年間秘書職をつとめ、昨年11月の異動で法人営業職に変わられたばかりなのだそう。そんなキャリアウーマンのワカコさんに、お仕事についてのお話を伺ってみました。

 

「14年ずっと秘書職だったものですから、全く今までと違う仕事になりここ数ヶ月は気を張っていました。これまでは社内での対応が多かったのですが、法人営業部では逆に社外のお客様への対応が中心で環境はがらりと変わりました。大変ですが素晴らしいチームにも恵まれ、新しい出会いも増え、毎日がとても新鮮です。」

 

とても生き生きと働かれている一方で、妻そして母の顔も持つワカコさん。続いて生活でのお話しをお聞きしてみました。やはりまず気になるのが結婚について。旦那様はとても明るく、そしてフレンドリーなアメリカ人のデイビッドさん。

ワカコ・ラヒースト ご家族と

お付き合いを始めた当初、なんとデイビッドさんは結婚をする気は全くなく、パートナーとしてワカコさんを大切にしていきたいと断言していたのだとか!一方でワカコさんはどうしても結婚をしたいと思っていました。

 

“結婚”への考えの違いから、時に大きな喧嘩をしてしまうことも。ある時ワカコさんは「こんなに気が合う人なのに、結婚したいがために別れるのは間違っている」と感じ、「今後結婚について一切切り出さないから、この先も仲良くやっていこう」と、デイビッドさんにお話しをされたのだそうです。

 

そこからワカコさんに大きな変化が訪れます。数ヶ月後に開催したデイビッドさんのサプライズバースデーパーティで、なんとデイビッドさんからプロポーズをされ、結婚へ!

 

のちにデイビッドさんに結婚を決意した理由を聞いたところ、ワカコさんが喧嘩の際に発した断言を聞いてから、自分が自由になった気がしたのだそう。その後どうしたらワカコさんや、ワカコさんの周りにいる人が幸せになれるのかを考えた時に、結婚を選択してもいいのではないかとそこで初めて自分自身で冷静に考えられたのだと語ります。

 

「結婚適齢期をむかえると、家族や友人など周りにいる人たちに結婚を急かされるのは一種の風潮のようになっています。ですがそれで焦って結婚したとしても、自分の意思で結婚を決めたという感じはしませんよね。何をしたら自分や相手がHappyになれるのかを冷静に考えること。そして相手に求めすぎず、期待しすぎず、がうまくいくコツなのかもしれません。」

 

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ワカコ・ラヒースト リビング

そうして結婚生活が始まります。国際結婚するにあたり苦労されたことはなく、皆がHappyでしたと語るワカコさん。そんなお二人のベースになっているのが“コミュニティ”という概念だといいます。

 

以前二子玉川付近に住んでいたお二人。デイビッドさんが趣味で大道芸をすることもあり、地域のお祭りなどにも積極的に参加して人々との交流を楽しんでいました。次第に地域の方達と触れ合う機会が増え、東京でその感覚を味わえるのがとても新鮮だと気づきます。結婚した後もそのような“コミュニティ(共同体)”を作りたいという思いが大きくなったのだそうです。

 

「24歳で1人で東京に出てきてから、自分には会社しかコミュニティがありませんでした。3.11を経験した後だったこともあり、人と助け合って何かができることの大切さを知りましたし、それが心底すてきだと感じて。家族を作ることはコミュニティを作ることだと思いました。」

 

またお二人は、結婚する時に子供についての意見を交わしました。デイビッドさんは自分の子供を欲しいとは思っておらず、もし今後子供を育てるならば、もうこの世に生まれている子供の親になりたい、つまり養子縁組をしたいという考えを持っていました。その考えに新鮮さを覚え、違和感はまるでなかったとワカコさんは語ります。

 

現在住む場所は子供も多く子育てしやすい環境だと肌で感じ、そこで何気無く養子縁組について調べてみたのだそう。そうして事が進み、間も無くユウタくんがラヒースト家にやってきました。

 

養子縁組で子どもを引き受けるためにはさまざまな準備が必要。特に、両親のどちらかが仕事を辞めなくてはならず、そこで時間を要したと言います。養子縁組をする家庭は、女性が仕事を辞めることが多いのだそうです。

 

しかしワカコさんには仕事を辞めるという選択はありませんでした。その裏にはデイビッドさんの意思もありました。「客観的に見たときに、僕が主夫になることが妥当だと思う。」と、仕事を率先して辞めることを決意したのです。

 

「日本は特にまだ、男性は/女性はこうあるべきという固定観念のようなものがあるので、デイビッドのようにそれをフラットに考えられる人に出会えて良かったと思います。」

 

そうしてデイビッドさんは主夫になります。ユウタくんと一緒に過ごす時間を作って、愛情を注いであげたい。その思いから3年は主夫を続けると決意しました。

ワカコ・ラヒースト ご家族と

「理解がある旦那さんだね、とよく言われますが、単純にできる人がやればいいという考えなのです。アメリカだと普通なことなのですが、『日本だと普通のことをやるだけで周りのママさんたちに褒められて嬉しい!』とデイビッドも嬉しそうなので良かったです。」

 

その言葉に私たちもはっとさせられました。確かに、できる人がやるということは普通のこと。当たり前のことなのにできていないことは、私たちの身近にまだまだたくさんあります。続いて、現在の養子縁組について思うところをお聞きしてみました。

 

「もっとオープンであっていいと思います。特に日本は家を継ぐための婿養子であったり、養子に対しては大人の都合でやってきたような少しネガティブなイメージがあるように感じます。しかし今はとてもオープンになってきています。何よりやましいことは全くないのですから。」

 

「養子をむかえると人に話した時、日本では『偉いね、よく他の子を育てる決意をしたね。』と言われることがあるのですが、偉いなんてことはないのです。海外ですと『Congratulations!(おめでとう!)』と祝福の声があがります。今までの養子縁組に対するイメージを払拭することは容易ではありませんが、日本ももっと自然になったらいいなと思います。」

 

多様性と叫ばれる割に、まだまだ保守的で閉鎖的な日本。子どもたちが大きくなっていく中で、他人に何か辛い言葉を言われることもあるかもしれません。ワカコさんは続けて語ります。

 

「この先ユウタが、本当の両親は誰かと問われる経験をするかもしれません。私たちはユウタに、『あなたをこの世に誕生させたのは私たちではないけれど、本当の両親は私たちだよ』と教えていくつもりです。もし何か言われた時でも、ちゃんと自分の意思を強く持って意見を伝えられれば良いのです。そんな子に育てていきたいです。」

 

また、ユウタくんをむかえ入れることに関し自然に決意ができたのは、ラヒースト家にいる3匹の猫ちゃんのおかげだともお話ししてくださいました。

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ワカコ・ラヒースト 猫

「3匹とはペットの里親募集で出会いました。彼らと一緒に暮らし始めて、猫なのですが自分たちの本当の息子、娘だと感じました。命あるものを育てるということに大きな責任が芽生えましたし、家族として大切にしていきたいと強く感じたのです。この経験があったから、養子縁組をしていざ自分に人間の子供がきた時も、すんなり受け入れられたのだと思います。」

 

インタビューの途中も、猫ちゃんとユウタくんがじゃれ合ったり、まるで会話をしているような光景があり、ほっこり和まされました。強い家族の絆を感じ、みんなで仲良く過ごされている本当にあたたかなご家庭です。私たちも自然と笑顔になっていました。最後に、ワカコさんが仕事と生活で大切にされていることをそれぞれお聞きしてみました。

 

「仕事においても人間関係でしょうか。これに尽きると思います。人との信頼関係の作り方を学び、またせっかく出会った方達との縁を大切にしたいです。会社でもコミュニティの概念があると思っています。」

 

「生活に関しては、自分に一番近い人、つまり主人や子供には何だって言えるから辛く当たってしまうことがあります。親しき仲にも礼儀ありという言葉がありますが、それがなかなかできないもの。感謝の気持ちを日頃から伝えられるような関係性であったり、相手を敬う気持ちを大切にできればすてきだと思います。」

 

「ですが実はいろんなことに対してそこまでこだわりはなく…起きることを受け止め流れに乗ったことで自然と今に至ったという感じがしています。」

 

と、終始朗らかな笑顔で語ってくださったワカコさん。とても謙虚で常に自然体な姿。内面から溢れ出るその美しさに、私たちもすっと引きこまれてしまいました。

 

今回は、ワカコ・ラヒーストさんへのインタビューでした。次回もお楽しみに!

 

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記事は取材当時のものです。