きるるはらら

物語のあるモノと暮らしマガジン

日本伝統の蒔絵を新しく。気軽に楽しめる蒔絵のアクセサリーを世界へ

うるしアートはりや 蒔絵

「うるしアートはりや」さんは一家で蒔絵を行っている蒔絵師さん。その伝統を守りつつ、新しい挑戦にも精力的に取り組んでいます。その一つが蒔絵の技術を生かしたアクセサリーです。蒔絵は色々な素材に金粉を使って絵柄を施す伝統工芸なのですが、ここでは一見蒔絵とは思えないデザインのアクセサリーも作られています。

 

もともとは茶道具のお棗(なつめ)などをご両親が蒔絵師として作っていて、ずっとそのお棗の蒔絵だけに取り組んでいたそうです。工房があるのは山中温泉という山中漆器の産地ですが、実は私たちが目にする漆器というのは全て分業になっていて、木地をひく木地屋さんがいて、その後に下地を作る下地師さんがいて、そして塗りをする塗り師さんがいて、最後に蒔絵を施す蒔絵師さんがいます。その全てを取りまとめているのが問屋さんです。

 

しかしながら問屋さんからの仕事が少なくなってきて、こういった伝統工芸も衰退の一途をたどります。そこで危機感を感じた針谷さんはなんとか新しい仕事をしなければと、まずはお母様が蒔絵のアクセサリーを作り始めました。ただ問屋さんはそういった新しい商品を取り扱ってはくれず、自分たちで販売することにしました。

 

うるしアートはりや 蒔絵

 

今は百貨店や展示会などで作品を自分たちで販売しているそうです。アクセサリーは蒔絵の特徴を活かして、白蝶貝や琥珀、べっこうなど異なった素材と組み合わせて作られています。

 

お母様の作品は年配の女性向けのものが多く、中には娘さんを連れてやってくるお客様もいる。そんな中でお母さんしか買うものがない、娘さんは興味はあるけれど、自分がつけられるものがないということで、針谷さんの息子崇之さんが若い方向けのブランドを立ち上げて、若い感性のアクセサリーや男性向けのアイテムを作り始めました。

 

もちろん従来のお棗や厨子、香炉などもジャンル問わず作っているそうです。

 

うるしアートはりや 蒔絵

 

そんな蒔絵の作品を作り続けている針谷さんですが、蒔絵を完成させるのはとても時間のかかる作業の繰り返しなのだとお話ししてくださいました。

 

漆(うるし)は1日では完成しなくて、描いては金粉を撒き、乾かしてまた漆を塗ってまた乾かして次は研いで…という作業を毎日繰り返していくのです。仕上がるときれいな金色になりますが、誰もこれを金粉だとは思えない質感です。金粉を蒔くから蒔絵というんです、時間のかかる塗り絵みたいなものです、とのこと。

 

現在の針谷さんの活動としては、百貨店での販売とたまに催されている公募展に出したり、最近は海外を意識して2016年くらいから海外の展示会に出展したりもしているそうです。2020年のオリンピックに向けて、いま日本の伝統工芸も注目を浴びているので、これを期に発信していくチャンスなのです。例えばドイツのアンビエンテという見本市に出展したり、昨年はパリのでの展示を行い実演を行ったりしました。

 

また、異業種とのコラボレーションにも積極的で、世界的に有名な工業デザイナーの方がデザインした日本刀の鞘の部分に蒔絵を施したり、金沢で手作りの時計を作っている工房の文字盤などを製作し、この時計開発、販売開始しただけで現在セレクトショップでの取り扱いはありません。

 

漆の特徴は色々なものに描けること。なのでコラボレーションも積極的に行っていきたいと思っているそうです。ハンコや印籠など少し変わったものにも蒔絵を施したりと、幅広く製作されていて驚きました。

 

そんな崇之さんにご両親と同じ蒔絵師になった経緯を伺ってみました。

 

もともとはご両親のやっている蒔絵には興味がなかったという崇之さん。高校を卒業するまでは美術関係の勉強はしていなかったそうです。

 

うるしアートはりや 蒔絵

 

そして高校を卒業する時に、特に就職したいところもなく、大学に進学しようと考えたそうで、そこで紹介されたのが富山の大学でした。そこでは漆のことが勉強できる大学で、崇之さんは4年、そこで勉強をします。漆に関わるようになったのはこの頃からで、卒業する頃には漆のことが色々と分かってきて、一通りの勉強をしたそうです。だんだんとそういった漆のことが楽しくなった針谷さんは、漆の仕事をしたいと思い、ご両親の手伝いをしながら販売などを行っていました。そこで新たなブランドの着想を得ます。しかし自分たちで売るには限界があるので、パッケージなどにこだわり、自分たちで説明しなくても売れるように、展示会などに出展して販売してくれるお店を少しずつ増やしていっているそうです。

 

ここで蒔絵の魅力について伺ってみました。

 
蒔絵の魅力は様々な表現が割と簡単にできること。私は決して簡単だとは思いませんでしたが…とにかくこの漆を使っているというところで、この技法は日本にしかないものなのだとか。漆自体は他の国にもありますが、漆を使って絵を描くというのは日本だけ。金粉を使ったりというのも日本ならではで、日本らしい、日本を代表する伝統工芸のひとつですね、とおっしゃっていました。

 

うるしアートはりや 蒔絵

 

崇之さんがいま楽しいことは、決まったことをずっとやっているのではなく、自分が思いついたものを形にできる喜びや、それを買ってくれる人がいること。海外などに行って、実演をしている時の見ている方の反応も好評で、そういった様々なことができるのは面白いそうです。

 

特に手に取っていただいたお客さまには、日本の伝統工芸品であることを自信を持って使っていただきたいそう。やはり日本の方に買ってもらいたいという気持ちがあるそうで、日本から世界に発信していってほしいですねと崇之さん。

 

今後は海外に広めていきたいと考えているそうです。いまは「2020年以降日本の景気が落ち込む可能性があるのでそれまでに海外の販路も作っておきたい」というのが海外販路開拓のきっかけです。もっと別のところを開拓していきたい、特にヨーロッパなど、フランスはパリを中心に活動を行っているそうです。

 

これからもブランドのアイテムのブラッシュアップや商品の魅力の向上に力を入れて、もっといいブランドにしていきたいです。と最後に語ってくださいました。

 

日本の伝統である漆を使った蒔絵。今までなんとなく目にしていましたが、そこにはたくさんの時間と手間がかかっていることがわかりました。高級品だからと興味を示さないのではなく、手軽に手にすることができる崇之さんのアクセサリーは私でも購入してみたいと思う一品でした。

 

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