手帳ブームの火付け役、大人気の「ほぼ日手帳」開発秘話を伺ってきました!

ほぼ日手帳

 

昨今の手帳人気の中、最も注目されていると言ってもいい「ほぼ日手帳」をご存知ですか?使っている方も、使っているのを見かけた方も多いのではないでしょうか。私も10年以上愛用しているこの手帳、今回はその「ほぼ日手帳」の製作元である株式会社ほぼ日にお邪魔して、手帳の開発秘話を伺ってきました!

 

ほぼ日手帳は2002年版生まれ。きっかけは、ほぼ日の社員さんやほぼ日刊イトイ新聞の読者さんを含めた、みんなで持てる「生徒手帳」的なものが欲しいよね、という社内の声でした。

 

初年度は何も分からないなか、読者の方々の声を聞きながら実験的に作ったそうですが、当初からほぼ日手帳の特徴である「1日1ページ」の仕様は変わっていません。

 

ほぼ日手帳

 

この時は縦軸と横軸の両方が印刷されていました。自由に使えるように両方作ったそうですが、1年使ってみたら縦軸の方が使いやすいということがわかり、縦軸のみに。

 

またほぼ日手帳の個性とも言える「日々の言葉」もこの初年度からところどころに入っています。これは、代表の糸井重里さんが元々文庫本をポケットに入れて持ち歩いていて、常に思いついたことを書き記していたことから着想を得ているのだそう。使う人が言葉の入っているところに自分の言葉を重ねてみたり、何かのヒントになったりするといいなと、そんな想いが込められています。

 

当初から文庫本サイズで、180度パタンと開いて、方眼で24時間軸という大きな流れは変わっておらず、見やすさや使い勝手を良くするなどの小さな改良を繰り返してきました。

 

私が初めてほぼ日手帳を手にしたのは2005年版、この年からLOFTで取り扱いを開始。その頃は1日1ページというスタイルが珍しくて、手に取った覚えがあります。

 

開発担当の方のお話では、最初の頃は強度が不十分で、1年間使うと背割れしてきてしまう可能性があるなどの問題も生まれたので、きちんと丈夫なものを作ろうと、ものづくりをしたことがなかった中での苦労を繰り返してきたそうです。

 

また人気のひとつでもある、薄くて書きやすい「トモエリバー」という紙を採用したのは、1日1ページというページ数の多い手帳なので、厚くなり過ぎないようにするのに印刷所の方に「いい手帳用紙があるよ」と勧めてもらったため。手帳作りの知識が少ない中、いろいろな方の声を聞きながらほぼ日手帳は出来上がっていたのですね。

 

意外だったのは、基本的には明確な調査やマーケティングを行わず、あくまでお客さまに喜んでもらえるもの、また自分たちが作りたいものを作っているというお話。毎年話題になるいろいろなカバーを取り揃えている点も、いろいろなお客さまに「これ私好きだな」と思ってもらえるように、と考えてのことだそう。

 

ほぼ日手帳

 

人気のミナ ペルホネンとのコラボレーションカバーや、伝統を取り入れたカバーなど、その種類は実に様々です。これは、洋服を着替えるように、身に付けるもののひとつとして考えてのことで、「持っていて嬉しい、ワクワクするようなものを作っていきたい」とお話してくださいました。その想いは手帳の随所にも反映されていて、長く愛用してもらうために、普通なら気付かないような細部まで繰り返し改良がなされています。

 

2009年版からは佐藤卓デザイン事務所とチームを組んで、手帳のデザインを繰り返し見直してきたそうです。

 

例えば方眼の線の交わり方を整えてみたり、日付周りを見やすくしてみたり、本当に気付かないような部分にも、使う人のことを考えて知恵を絞っていて、そのきめ細やかさに驚かされるばかりです。

 

佐藤卓さんご自身もほぼ日手帳を使っていらっしゃるとのことで、ユーザー目線からも作り手目線からも、小さな気になることを丁寧に減らしていくことでさらに使いやすくなるよう内省してデザインしてくださっているそうです。

 

ほぼ日手帳

 

また「カズン」や「weeks」が生まれたことについて、とても興味深い誕生秘話を伺いました。特にA5サイズの「カズン」が発売された経緯なのですが、カズンを作った当時は「1日1ページなのですごく重い」という声がお客さまから多く、普通であればそこで「ではもっと軽いものを…」となるところ、あえて大きいものを作ったのだそうです。そうすることで相対的に「こっちは軽いでしょ?」という…まさに逆転の発想。これは代表の糸井さんの発案なのだとか。

 

そしてこうお話ししてくださいました。

「たっぷり書けるっていうのをほぼ日手帳は大事にしているので、軽くするために小さくして書くスペースを減らしていったら、コンセプトである自由さや、いろんなことをここに書いてくださいねという基軸から離れていってしまう。ほぼ日手帳らしさを保つことと、重さを解消すること、その2つのせめぎ合いの中でカズンが誕生しました。」

 

その後、1年を半年ずつ、2冊に分けて収録した分冊版のアベックが生まれますが、半分になった分もっと自由に貼ったりできるということで、半年分を1年分と同じくらいの重さまで育ててくれるお客さまがいたり。みなさんやはりたくさん書いたり貼ったりすることを楽しんでいらっしゃるのですね。

 

weeksを作った時も、たっぷり書けるというのはぶらさないようにメモページをたくさんつけたのだそうです。

 

ほぼ日手帳 weeks MEGA

 

ほぼ日手帳 weeks MEGA

 

さらに今年2017年の11月(インタビュー時)には販売開始ほやほやの分厚いweeks MEGAも発売になりました!

 

ほぼ日手帳

 

ほぼ日手帳

 

また英語版である「Planner」については、以前から英語版を出したいなという話はあったそうなのですが、そのまま翻訳するのかとか、どういう風に英語化したらいいのかなということを考えあぐねていたそうです。

 

そんな際に「ARTS&SCIENCE」のソニア パークさんとのコラボレーションの話が生まれます。最初はカバーを一緒に作りたいね、というお話でしたが、本体もということになったそうです。そして手帳という日本独自の面白い進化を遂げているものを、海外の方にも使っていただけるインターナショナルなものにしようと、ソニアさんと一緒に英語版を製作。無事デビューさせることができました。なんと、海外でも使ってくださっている方は増えているそうです。

 

確かに、こんなに豊富な種類の手帳が販売されているのは日本ならではですよね!

 

最後に、ほぼ日手帳の人気について開発担当の方に伺いました。

 

人気の秘密については「なぜ人気かと聞かれるとわからないのですが、おそらく自由なところかなとは思っています。そして基本的に大事にしているのは丈夫だということ。すごくたくさん使って書いたり貼ったりしても壊れない、使いやすいっていう、みなさんが気付かないような商品の最低限としてのクオリティというのは絶対に維持しています。」

 

「そこが揺らいでしまうと使い続けていただけないと思うんです。例えば悪い紙質だと気になって使い続けないですよね。でも良い紙質だと気づかず使い続けられるというか。そういう小さなことを積み重ねてきちんとしたものを作るというのが、大前提にあって、それが使い続けていただける理由かなと思います。」とお話ししてくださいました。

 

ほぼ日手帳

 

今後のほぼ日手帳については、なんと今の時期からもう再来年の手帳の案出しを始められているそうです。常に考えて、全ての工程においていろんな知恵を絞っているそうですが、一番大変で時間がかかるのは最初の案出しや、本体をどう改良するかとか、どういうカバーを出していくのかということ。

 

それを最終的には糸井さんと打ち合わせして、手帳として形になっていきます。

 

開発担当のみなさんは、ひとつずつ、それが本当に欲しいものなのかということを考えて、カバーも絞るまでに例えば100個くらいの案が出るそうです。

 

毎年人気のカバーは発売から1日で完売してしまうことも。やはり反響があると本当に嬉しい、とおっしゃっていました。

 

「私たちは、スタート地点に立つところまでしかお手伝いできないので、そこから先、書き出すのは使う方。書いていただいてそれを振り返る方がずっとずっと楽しい時間なので、そこから1年間使っていく、そのために丈夫なものとか、1年間使っても飽きがこなくて嬉しいものを考えて作っています。」

 

開発担当のみなさんは、ほぼ日手帳は完成品ではなくて、半完成品を作っていると思っていて、これを完成品にするのはお客様自身なんです、と語ってくださいました。

 

毎日の自分を重ねていくことで自分の本ができていって、振り返ると楽しい時間が過ごせる、というのがほぼ日手帳の楽しみ方ですね。

 

シンプルなカラーのカバーや、人気のクリエイターやブランドとのコラボカバーがあったり、日本の伝統的な織物が使用されたカバーがあったりと、ひとつひとつ取り上げてみれば本当に想いの詰まった手帳ですが、その魅力はここでご説明するのではなく、みなさんが実際に手にとって感じていただきたいなと思います。

 

これからもワクワクするような手帳を期待しています。取材にご協力いただきましたほぼ日の皆様、本当にありがとうございました。

 

記事は取材当時のものです。